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しょくぎょうふじん ③ 「オデッセイ」のジェシカ・チャステイン

 

 うちの夫と一緒に観た後軽く言い合いになりました。

 「女の上司でも先頭に立って部下のフォローに回らなきゃいけないのか」・・・と何故だか観に行った日の夕食中にいきなり愚痴りだしたので驚きました。ちょうどオデッセイの前にスター・ウォーズ/フォースの覚醒 (字幕版)を親子三人で観に行った時もハン・ソロがあんなことになってちょっと哀しくなっておりましたが、このジェシカ・チャスティンの船長っぷりが更に「なんか追い詰められた気分」にさせた様子。夫「アメリカって何でもリーダーはあんな風にしなきゃいけないのかなあ」私「違うと思うよあのジェシカ・チャステインの行動には上司として女性の弱点を最初っから描いているんだってば」夫「そんなことないよっアメリカだからだよ・・・」ってどんどんいじけ出すのには呆れました。ウチの夫ももう会社では結構エライんだそうで、今日も今日とて「講演会頼まれちゃった♡」と自慢したりするので嫌がらせに書いたこのブログ読ませようと思いますわっ、けっ!

火星の嵐が来たせいで「迷子」に

 植物学者で宇宙飛行士のマーク(マット・デイモン)は火星の有人探査のチームと一緒に火星を探査しておりました。そこへ急に巨大な砂嵐が起こります。皆でロケットに避難しようとしますが、マークは逃げる途中で折れた備品のアンテナにぶつかって砂嵐の中へと消えてしまいます。このシーン、よくよく見ると主人公マークの性格といおうか何となしにアッチふらふらコッチふらふら・・・といようなやや落ち着きなさそうな佇まいなのがもう一人だけ逃げ遅れそうな雰囲気を最初っから醸し出していたような気がしました。それと何時だって後先考えずに一人でマークを助けに行くルイス船長(ジェシカ・チャステイン)さんね、操縦士のマルティネス(マイケル・ペーニャ)が止めに入らなかったらひょっとしたら二人ともヤバかったかもしれないんだ・・・むしろそんな風にあの始まりのシーンを捉えてもいいんじゃないかなあ。これが後々「失敗は成功の母」ともいえるマークとルイス船長が起こした「奇蹟の生還」を予感させるのだっ。

火星で初めて「農夫」になった男だぜぃ

 有人探査船アレス3のクルーたちはマークが死んだと思って火星から立ち去り地球へと向かう軌道に入ってしまった。でも砂嵐の後、マークは生き残っていたんだよね。一人で残された資材を使ってサバイバルしようとする。具体的にはジャガイモ栽培にチャレンジするのさ。じゃがいもがわずかに食料として残されていたのと自分と乗組員のう〇こが残されていたので火星の土地を土壌改良しちゃったの♡。水分ももちろん自分のを再利用して、探査活動で使用していた太陽電池キッドみたいなのも利用して工夫したら結構な収穫になった・・・ここらへんのくだりがありきたりかもしれないけど前半一番わくわくするところだよね。それで次のミッションの宇宙船が来るまで生き延びようとしたんだけど、ある日また砂嵐が来てマークの造った畑が凡ておじゃんに。いよいよ大変になった彼は過去の火星探査の際に利用した通信機器を復活させNASAとの交信を可能にしたのだった。(1998年に業務を終了したけど実際にNASAが飛ばした無人探査機が火星にはあるのだよ)

ヒット映画「ゼロ・グラビティ」との比較

 ゼロ・グラビティ [Blu-ray]は公開時に私一人で観に行って、特に家族には何も映画のことについては話をした記憶もないのですが、うちの息子は何故だか「ゼロ・グラビティ」に凄いこだわりがあり「ゼロ・グラビティに出演していたサンドラ・ブロックさんは女性なのか?」としつこく聞いてきたのでずっと不思議でした。あと巨匠北野武御大が「ゼロ・グラビティなんて何故あんな内容の無い映画が評価されたのか」と本気で怒ってて思わず驚いたことがあります。なので「オデッセイ」の映画宣伝がネットでも始まるや息子に「今度の主人公は男のヒトだよ、一人で火星をサバイバルする話だから良かったね。」で映画観に行こうか~と誘った経緯があります。女性が一人宇宙空間で脱出劇を繰り広げるのにどうしてそれ程日本の男は強い抵抗感を覚えるか?・・・不思議でなりませんが、とにかく「ゼロ・グラビティ」後の宇宙飛行士の映画である「オデッセイ」では、いろんな場面で「英雄/ヒーロー」が入れ替わり登場しリーダーシップを発揮することにより取り残されたマークの救出計画が進行していくのでした。皆一人で何事もできるわけでも生きていくわけでもない、ということが「ゼロ・グラビティ」より明確に描かれていきます。

誰でも「リーダー」としてチームを引っ張る時がある。リーダーの個性を活かせ。

 マーク生存が発覚した地球のNASAでは当然大騒ぎになり、とにかく彼が4年間生き延びるための食糧を積んだ無人ロケットを飛ばそうということになりました。でも輸送ロケットの発射時に失敗。もうロケットが無くなったNASAは中国から借りて地球軌道まで飛ばすところまでは手当します。・・・それにしても火星まで行く船は中々用意できそうもないし大ピンチ。そんな時にマイペースで変わり者の研究者(リッチ・パーネル)が計算の結果地球へ帰還する途中のアレス3が火星に戻ってマークを助けるのが一番成功率高いのでは?と提案するのでした。いろいろすったもんだして結局はアレス3が中国のロケットを使って火星に向かうことになりますが、感心したのは二人のリーダーであるフライトディレクターのヘンダーソン(ショーン・ビーン)とルイス船長との対比の描き方。ヘンダーソンはマーク生存を知らないアレス3のクルーにわざと「NASAが隠してたマーク生存」を漏らしてしまい、「熱心なルイス船長が決断さえすれば上位下達によりクルー全体できっとマークを救出してくれる」と断言する。で、ルイス船長はと言うとクルー達とマーク救出の是非について徹底的に討論しクルーの考えが一つにまとまった上で動き出すのでした。クルーの意思が高レベルまで統一されていないと成功はしない、と彼女は思う性質のようです。ここに女性がリーダーシップを取る際の長所と短所がはっきり描かれているのだよ。

ルイスの「リーダーが何でも先頭に立ってやっちゃう」のは半分「病」

 女性が集団の上に立って指揮を取るのは難しい・・・というより、女性は進んでリーダーにはなりたがらない。米国の場合はリーダーシップを発揮しようとしない人間にはマトモな仕事を与えてくれないから女性も頑張って管理職になろうって出世しようとするけどね。だって人にモノを頼むのってしんどい作業なんだよ、こと女にとっては(細かいところが気になるからね)・・・言葉を換えると想像力の範囲が男よりも狭い傾向にあるかもしれない。つい何でも自分でやりたがるのは、部下を信用していないんじゃないのよ、自分が今事態を正しく把握しているかどうか「いつも不安だから」なの。自分が部下よりも不器用で下手くそってわかってても女性は自分一人でやりたいくらいだから。だから責任感の強い女性のリーダーの暴走を抑えるには冷静な操縦士のサポートと手順を頭に叩き込んでいても尚「テンパリ気味の女船長」の上を行く思いつきで直ぐ実行に移さないと気が済まないはみ出し野郎(マークのこと)の活躍が必要なんですね。マークが自分の防護服内の空気を利用して宇宙空間に飛び出すという捨て身のアイデアに対して「何故か緊張感が解けて大胆になる」女船長とクルー達の活躍と救出成功劇に皆興奮する・・・娯楽映画だから当然って言われりゃそれまでですが、スケールがこんなに大きくなくても日常で小さな「一致団結して成功」する体験は観客側だって少しは持っているからさ。そして出てくるのが男ばっかりの映画だと各登場人物の「決断のプロセス」の描写がこの映画ほど多様には表現できなかったかもしれないよ。

 

「この映画は現在よりも更に頻繁に多様な人材が宇宙空間で普通に仕事をしている近未来の設定である」・・・と仮定しながら観ていた、というかそうでも考えないと最初から観てらんないじゃんか~だったので(他人が言うほど)違和感は感じませんでしたがそれでもさすがに最後の最後「サンドラ・ブロックの姿」だけは、うっそ~って。しかもあんな美女の柳腰じゃ尚更。(笑)