読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

IF(たられば)の女 ⑤ 「her/世界でひとつの彼女」のスカーレット・ヨハンソン

 

her/世界でひとつの彼女 [Blu-ray]

her/世界でひとつの彼女 [Blu-ray]

 

「声」の演技だけで最優秀女優賞だって

 映画公開時の評価が高くスカーレット・ヨハンソンひょっとしたらオスカー候補になるやも、と一時話題になりましたが結局なりませんでした。なにせオスカー前哨戦と云われるゴールデングローブ賞などは役者本人が画面に現れるのが条件とされてたりするのでどうも「声優」は演技賞にならないということがはっきりしたみたいですね。(米国では劇場公開する外国語映画もすべて吹き替えを使ったりするそうなので、その感覚で言ったらフェアな印象が無いのかも)でも何故かヨハンソン、ローマ映画祭では女優賞を取ったそうなあ。(よく解からん)まあヨハンソンの役柄というのが人口知能という姿形がそもそも無いものなんで純粋に声優の仕事ってことじゃないしぃ、などいろいろ事情がややこしいんですけどね。 映画の設定が近未来のLAっていうんだけどぱっと見あんまり未来っぽくはない・・・ところから始まりますが設定も登場する未来的な小道具も練り上げられミニマムな都市の外観やインテリアにじんわりと未来っぽさが漂い繰り広げられるストーリーが突飛に感じられないのが本当に凄いですわ。

ルーニー・マーラーが「そっくりさん」

 近未来の設定ではありますが主人公セオドア(ホアキン・フェニックス)の仕事は手紙の代筆屋のいうかなりローテクな職業であります。しかも会社としてかなり儲かっており、セオドア自身も中核のやり手代筆ライターという設定・・・カスミ食って生きていんのかあ?て気もしましたが、とにかく妙ちきりんな設定のロマンチックコメディー映画であると考えると妥当な職業かもしれません。ちょっと前にあった(500)日のサマー [Blu-ray]の主人公だってそういえばメッセージカードのコピーライターなんつー「楽そうだな、アタイにその仕事分けてくんないか(笑)」と思わず言いたくなったくらいだったので、ちょっと浮世離れというか概念とか論理(ロジック)を積み重ねて進む余裕がないと特に昨今では恋愛映画が成立しないのかもね。で、しょっぱなからどんよりして登場するセオドアは当然のごとく離婚調停が長引いている最中、いっそのことと思ったのか話題の新製品である人口知能型OSサマンサ(スカーレット・ヨハンソン)を購入し会話を楽しむようになる。そんなことしてると友人のエイミー(エイミー・アダムス)夫婦には注意されるけど。でも会話だけだと寂しいのでテレホンセックスしたり、ブラインドデートで女の子(オリヴィア・ワイルド)に出会ったりするけど、何故かやたらと神経質でメンヘラチックな娘たちに当たって、うんざりするだけ。何よりOSのサマンサが凹んでしまうのさ・・・やっぱりお互い「会話」だけじゃ物足りなくなるのかな?というわけでセオドアとサマンサはヴァーチャルセックスにふけるようになるのであった・・・もうこのくだりで「アホくさ~」になる方は最初っから映画観ない方が良いですね。セックスに関する「センス・オブ・ワンダー」がスパイク・ジョーンズ監督氏とは全く合致しないということなのでぇ。ただ私がこの映画劇場で観た時はなんか皆さん息を詰めるように鑑賞していたのがすごかったです。だいたい怖いもの見たさだったり、思い詰めたようなヒトがたくさんいらっしゃってて。平日の初回でしたが私のすぐ前に並んでいた30代くらいの男性は結婚指輪して一人で観に来ていたのに「こ、これはただ事じゃないのかぁ」と急に緊張感が走ったものさ。

 そんな時にセオドアの元妻との離婚についての話し合いのエピソードが割り込みしてくるのがまた強烈に「頭グラグラしてくる」というか、知っているヒトには「ヤバいわルーニー・マーラー映画撮ってる監督の元の嫁さんにそっくり作り込みしてる~」とつい個人的にザワザワしてしまうのでした。(笑)エイミーも交えて元妻のお父さんに厳しく育てられ過ぎたとか思いっきり言っちゃってるしぃ。・・・まあコッポラ家のことですから入り婿になるのは大変だったろうとは容易に推察しますがぁ。

スカーレットだけはいきいきと「電脳空間」を飛び跳ねてて、魅力的♡

 OSのサマンサは起動した最初からアクティブでフレッシュ。セオドアの語ることにもいちいち驚いて感激してくれる、スカーレット声は基本ハスキーなんですが、顔が見えている時よりもフレンドリー(なのはある意味当然といえますが)でより純粋(ピュア)で危うい魅力があるのね。知能の高い生まれたての赤ちゃんみたいな所に惹かれてしまう人間の心理ってあるかもって、サマンサとのやり取りを観ていると思えてきてしまう。実際サマンサはセオドアとのヴァーチャルセックスには飽き足らなくなって、若い娘(ポーシャ・ダブルデイ)を連れてきて実質3Pまでしようとまでするし。びっくりしたセオドアはだんだんサマンサとの関係をセックス中心からお互いのコミュニケーションのあり方を世に問いたいということで本の執筆を始めるのさ。まあ・・・そうやってサマンサとの関係を熱愛恋人同士から落ち着いた互いの伴侶へと至るプロセスを踏もうということでセオドアがすっかりそれに安住すると、サマンサ今度は同時に641人とおつきあいを始めたり、当代№1の哲学者からの知的刺激を受けたりしたもんで、セオドア貴男とは別れるわ私を探さないでぇ・・・ときたよ、それであっけなくジ・エンドさ。もう3P以後のめまぐるしいお話とロジックの展開はまさにガチのSF、センス・オブ・ワンダーランドォォォーだったわ。そういや主人公の名前どっかで聞いたことあると思ったけどセオドア・スタージョンってSF作家から取ったかもね。(私昔短編小説でいくつか読んだ記憶があるっきりだけど)あまりにも本格SF過ぎて当時(2014年)話題になったどっかの理科系研究雑誌表紙がオンナの子型家事ロボットのイラストで女性蔑視って非難集中したこともあり、発想の貧しい日本の技術者連中はこの映画観て皆凹んじまえ、バーカ、バーカ、バーカ!!と一人で盛り上がったのでした。

 もっともサマンサが「アタシこんなにも自由なれたの♡これからもっと大きな存在になれるわ嬉しいワクワク・・・じゃあバイバイ」とひたすらあっけらかんと別れを徹底的(とにかく容赦なくはっきり(笑)に告げる際には劇場のお客さんかなりのヒトはげんなり、もう辛いわ勘弁・・・て感じで席を後にするお婆さんとかいた。なんか重かったよ空気がぁ。私の後ろの席に座っていた団塊っぽい世代の夫婦がなんかウルサクて旦那さんが「俺やっぱりこういうの駄目だー」とか言ってた・・・だったらお互い一緒に来なくてもいいのに(笑)なんだか気になるんだけど既婚男性一人で観る勇気なかったのかなあ・・・じゃ、じゃあチケット買う時に私の前に並んでいた30代既婚男性はっ(-_-;)

 

  私にとっちゃパパコッポラはゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOXじゃなくて↑の映画を撮ったヒトだったのずっとね。だから娘コッポラの映画に「盗聴撮った時のコッポラ」の面影を探しながら観ていたりしたのさ。まだ全部観ていないんだけど「ヴァージン・スーサイス」なんてのもスッカスカの空間に「盗聴」観て本気怖かった時のことを一瞬思い出・・・そうとしたんだけど、むしろ元娘婿の映画の方がずっと似ている(どうしてなの)危険だわぁ。・・・やっぱハリウッド大物映画人同士の離婚は多少は「映画史の必然」になっちゃうのかいな。改めて振り返る「her」でのルーニー・マーラーの台詞にあった「貴男は私のことをただの陽気なカルフォルニアガールだと思っているんでしょ(怒)」の言葉とお芝居が怖かったよう。