IF(たられば)の女②  「ガンツ」の夏菜

 

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 ごく「普通」にヒットして・・・

 そしてごく普通に皆の記憶が風化しつつある映画になっているという・・・て書くとイケないのでしょうか? で、私自身はかなり面白かったと当時いたく感心したつもりだったのですが、「ガンツって面白いよね」「当たり前だろうが、なにせあのガンツなんだから」て漫画原作ファンはきっというコトだろうなあ、と発言を控えたくなる気分に公開当時なっちゃったからかなと。振り返るとこの後夏菜嬢だけでなく吉高由里子まで朝ドラヒロインになり、結局現在売れっ子の綾野剛でさえ一般ピープルにとっては「そういやガンツに出てたよね」ということで認知されている状態でもあるのです。それなのに結構忘れちゃっている。「ガンツ」っていうと思い出すのはまず何だったけなあ?そうだ例えば「田中星人」!アイツにはムカついたね、あとは夏菜ちゃん・・・いやあ別に彼女がいやだとか逆に大好きとかそういうコトじゃないんだけどぉ、夏菜。ぶっちゃけ今回ガンツのことを考えて夏菜をセレクトしたわけではなく最初に彼女のことを考えていたら「取り上げるのガンツにしよう」となったのさ、自分でも驚き。</

夏菜の「理由なきメンヘラ」

 夏菜の役は主人公玄野(二宮和也)、加藤(松山ケンイチ)とともにガンツに招聘される岸本というお風呂場で手首を切って自殺したところへ飛ばされてきた娘。ガンツに連れてこられた人間というのは玄野をはじめ皆いったん死んでしまったと思われた段階でガンツのあるマンションの一室に集うことになっているんで。そんでもってガンツが繰り出す「星人」と戦って勝った者だけがまた再び生者として自分の日常生活に戻れます、というわけ。玄野と加藤のように地下鉄の事故をきっかけにやってきた者もいるし、岸本や西(本郷奏多)のように自殺してきたような人間もいる。そしていきなり「実在する東京の多摩市あたりのようなんだけど」なトコで前述した田中星人やねぎ星人親子と戦わなければならない、まあ「ガンツスーツ」っていう着用すればほぼヒーローになれる強いスーツやら武器やらは提供されるけどね。でもプレーヤー自身がゲームのキャラになって戦うのは大変、油断しているとすぐに死んじゃうのだ。最初に犠牲になる小学生の孫とおばあちゃんのコンビなんてものすごく可哀想だったよ・・・そういう描写が日本人のセンス・オブ・ワンダーっちゅうか、「特撮&SFファン心」をつかんじゃう重要なつかみになるのよ。あとはなんだかひたすらに「暗くて重たい」印象の夏菜ちゃんね、彼女はガンツ内で戦闘に参加していてもどこか日常から地続きだということを感じさせる存在で、他のメンバーとは何か違うのさ。

おこりんぼう星人との激闘後に・・・

 GANTZ PERFECT ANSWER [Blu-ray]になると、地下鉄内での戦闘やらどんどん派手になって、玄野たちグループを追跡する警察公安の刑事(山田孝之)みたいな人間も登場しますが、映画ではあくまでも玄野たちとガンツとのゲーム内容が苛烈になってくるのに目が行ってしまうので、原作のファンには多少ものたりない所があるのやもしれません。西や鈴木(田口トモロウ)といったキャラクター達は原作漫画や連続アニメといった所ではもっと活躍する場があり、かなり生々しい存在感を放てるのでしょうがなにせ限られた尺の映画ではどこかもったいない印象を受けるかも。しかし意外と登場場面の少なさの割に間抜けな印象が無いのは短い芝居でも各自の個性がはっきり出るようなキャラクター造形がしっかり成されている(おそらく原作漫画の底力の成せる技)とあとは夏菜演じる岸本の存在が「濃い」ことが他のキャラクターを引っ張っている気がします。演技だけだったらもう一人のヒロインの多恵(吉高由里子)の方が安定感もあって達者なんですけどね。岸本は自分に自信が無く内気で他人と関わるのが下手な性格、自殺したのも彼氏に裏切られたショックらしいのですが、どうも岸本自身にも原因があるよう。ただそんな岸本は時に大胆行動に出て周囲を驚かせて、見事「成功」していしまうヒトなのですよね、だから上野でのおこりんぼう星人との激闘も最終的には岸本が動いたことによって決着がつく、加藤なんか死力を尽くしたというより岸本の死によって気力が失せて玄野から去って行ってしまう様。ガンツは最終決戦で多恵をターゲットとするんで玄野は「本当になにもかも失ってしまう」と追い詰められていくはずなんですがどうも私はおこりんぼう星人との戦い以後、長いエピローグだな・・・と思わず感じてしまったのだ!(笑) 我ながら「そんなわけないだろ」と突っ込みつつラストまで鑑賞を終えたのさ。

そして夏菜は「世界を救う」

 夏菜さんは大手芸能事務所にスカウトされ、幾度のオーディションを経て「ガンツ」への出演にあたり「ほぼ原作の岸本にイメージピッタリ」ということで決まったそうです。その後は朝ドラ主演だしとんとん拍子の出世になりそう・・・と思われていたのですが、何故か現在「あんな大手事務所でそこそこの視聴率を取った朝ドラ女優なのに気の毒過ぎる女」というかなり複雑な状態に置かれております。んじゃ、その後の彼女の出演作が不調かというとこれまたそうでもなく、CMにしても銀行系のカードローンとかノンアルコールの隆盛でことさら売りにくくなっているCHOYAの梅酒とか・・・あまり喜んでやりたがる若い女性タレントいないんじゃ? てな分野で長く活躍しているのを観るにつけなんだかんだ言う割に皆夏菜のことが好きだよな、と思えてくるのは私だけでしょうか。昨夏のTVドラマ「ホテルコンシェルジュ」なんて皆「夏菜にあんな役を振るなんてかわいそうー」との声が上がり、彼女が後半活躍するにしたがってまんまと視聴率が上がっていったという・・・(ウチの夫もコレに引っかかって最終回までみてやんの)もう何が何だか解からない現象が起きました。「スペシャリスト」シリーズ化にあたり夏菜がレギュラーに入ったのも「お願いこの世界を救ってほしい」というリクエストでもあったんかいな?と妄想が広がってしまうから不思議です。そして考えてみたら現在でも語られるほど「不評の朝ドラ」についてなんですが(笑)、結局は「ガンツ」の続編というか夏菜さんが演ったヒロインは実をいうと「武田鉄也星人」や「舘ひろし星人」とかと戦って勝利を収めるも、「お前が悪いんだー」って石を投げられたりするタイプ、キャシャ―ンやらザンボット3に出てくるヒーロー物の女性版を極めちゃった、しかも最後には「強ければそれでいいんだ~♪」のまんま、孤高のヒロインとして私充足しましたとして物語最後完結しちゃったところに超不評の原因があったんではないかと最近分析して一人で納得しております。しかしまさにスクラップ&ビルドを体現するヒロインてゆうのも得難い個性ではありますが、そんな岸本=夏菜を救おうと頑張ったのが加藤や玄野たちだったんですけどぉ・・・(-_-;)