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法螺あぁぁーな女 ① 「クロユリ団地」の前田敦子

 

クロユリ団地 スタンダード・エディション [DVD]

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 前の席に座っていた女子高生たちは

 観に行ったのが池袋のサンシャイン通りだったんで平日の初回なのに女子高生三人組がきゃあきゃあ言いながら映画館に入ってきたました。もう公開一か月を過ぎた頃だったのでコアな客層はもうあらかた観ちゃった後というか、見逃したタイプやら、話題のネタに観ておこうか~という感じ。女子高生たちだってモロ「前田のあっちゃん女優に転身って大丈夫?」みたいなミーハー丸出しで来ていたクチだったのでしょう。私はホラーが苦手、それも日本の怖い系映画は外国モノより倍以上怖いと普段から感じている所為でなかなか日本のホラー映画は観ないのですが、これだけは何となく「観に行かなくちゃ」という気になってました。それでも腰が重く、近場でサクッと行けるならとっとと観よう・・・ぐらいだったんです。それもあってつい吃驚しちゃったというか、思わずその年の映画の個人的ベストに上げちまったっつーコトなのです。それは今振り返ると映画終わった後の女子高生たちのリアクションもあったのも一因かな。

 …それで終わった後、彼女たちはどちらかというとかなりシリアスに怖がってたように感じました。

とにかくイマドキの「普通のおんなの子」

 なんだか古ーいカンジの「クロユリ団地」に引っ越してきた明日香(前田敦子)はひたすら張り切って元気いっぱい。やれ引っ越しソバをどうしようだの、お隣さんに挨拶のお菓子を持って行こうだの、今時「そんなベタにこだわらなくても」というくらいにせっせと引っ越し作業をこなしていきます。福祉関係の教科書を抱えているので、新学期に向けてやる気満々だなあエライなあホント古風で感心な御嬢さんという印象。ところが引っ越し挨拶に行った隣の篠崎(高橋昌也)家は家人がいるんだかいないんだか不明で、早速に不安が増大してしまいます。明日香の家だけが小学生の弟聡(佐藤瑠生亮)に父(勝村政信)、母(西田尚美)と賑やかな4人家族でなんだか浮いている。明日香はお隣さんはともかく、団地の公園で遊ぶ少年ミノル(田中奏生)という知り合いはすぐにできるのです・・・もうこの展開で大抵の観客にはオチが読めるというか、いい加減にブリっこは止めなよいい歳してという印象を持つ方も多いでしょう。確かにその通りなのですが、明日香という娘は映画のスタート時にはそれほどイカレているという訳ではなく、ただひたすらに繊細で健気に日々を耐えているだけなんだというコトがよく理解できる山場が中盤にあるので(以前にも書きましたが)私なんか思わずどひゃーと大泣きしてしまい、それでやたらすっきりしてしまったのでした。私の世代はどうしてイマドキの普通の子ってあんなに「繊細で共感したがりでやたら優しい」のだろうか?と不思議でならない時があるのですが、現代の二十代の若者はもの心着くころには阪神淡路大震災で多感な頃に東日本大震災物凄い喪失の出来事の間に挟まれて育ってきていることを考えるとしごく当然かもしれません。

 「クロユリ団地」はそんなかつてない程の災害続きで日本人の感覚が変わってきていることがホラー映画というジャンルを通してよく描かれています・・・まぁ非常に解かりやすく、エンターテイメント的に、てことも付け加えときましょう(笑)、ついでに。

限りなく「人災」に近い「天災」と「まるで天災に遭ったかのように処理される人災」

 明日香が幼い頃に遭遇した事故にしろ、篠崎の孤独死にしろ、かのミノル君の身に起きた悲惨な出来事にしろ誰かの所為にするには特定が難しいし、かと言って己の所為にするには可哀想すぎる内容ではあります。「誰の所為でもない、それが運命だったのだ」と第三者目線では結論がつくような話なのですよ・・・で、その理屈が昨今ではまったく通らない社会になりつつある。「天災は忘れた頃にやってくる」状態が「予想されるべき、避けられたはずの人災」に変化する一方で、「究極の人災」にあたる戦争なんかは「やあ、止めても無駄だよ」みたいな気分で日々報道されたりしてるでしょ?私個人的にはちょっといびつというか困った風潮だなあとも感じるのですが、TPOを考えないでそんなこと発言したら世間的にもネット的にも糾弾されそうだし、私自身も上手いこと述べられる自信がないけど。そうゆうことなのでもしブログ読んで「クロユリ団地」未見の方は、明日香が遭遇した事故は昔の御巣鷹山の話みたいとか感じながら観るのがお奨めです。「何かの誰かの所為じゃなければ、アンタの所為よ」というゼロサム思考で自分のやったコトを判断するしかないというのは物凄く苦しい・・・そんで「イマドキの優しい女の子」っていうのはそうやって自分自身を追い詰めていっちゃう。だからそんな明日香に救いの手を差し伸べようとする人間も後半現れてきます。篠崎の死をきっかけに知り合った笹原忍(成宮寛貴)とかね。笹原が紹介してくれる女霊媒師(手塚理美)も「やさしいヒトって疲れるのよね・・・」と慰めて明日香のマインドを換えようと説得してくれるし。・・・でも「クロユリ団地」における強烈な負の磁場っつーか、実をいうと明日香自体が磁場へ人々を誘い込むエサ的な存在かも? というくらいの阿鼻叫喚ワールドがクライマックスに用意されているのだぁぁ!

「ホラー」に関してはウルトラ級のオンチ

 な私ごときがこれから比較的最近に作られた日本映画の中から自分で勝手にホラーと決めつけた映画を語っていこうと思いますから、まあコアなホラー映画ファンは「冷笑しながら」読んでいただければ結構だと思います。だいたいその手の映画ファンが私のブログなど真に受けて、コメント残すコトもないでしょう。なにせ皆さんウルサ型ぞろいだしねー、ホラー映画のファンも「派閥」とかいろいろありそうだし、層がかなり厚そうだわ。私ときたら一体ホラー映画何に「興味が持てない」のか理由がハッキリ言って説明ができないくらいのオンチというか、スティーブン・キングの小説でも「長すぎて怖がるというほどの緊張感が持続できない」という理由でかの「シャイニング」さえ前篇で放り投げ、妹に「バカじゃないのお姉ちゃん」となじられた過去があるの。キューブリックシャイニング [Blu-ray]を観た時は「ジャック・ニコルソン顔面怖いわ、あんな顔ができるのは物心ついた時からきっと肉食って育ったからに違いない」ってつい注意力散漫になっちゃうし。わりと面白怖かったホラー映画で覚えてるのはチャイルド・プレイ HDリマスター版 [DVD]とか【映画チラシ】13日の金曜日PART8 ジェイソンN.Y.ヘだもんね・・・(-_-;)

そしてどうして「クロユリ団地」だけわざわざ見に行こうとしたのか?

 ・・・気まぐれだとしても。それはホラーオンチの映画ファンの素朴な疑問といおうか、以前から不思議だったんですけどホラー映画のヒロインというのは「怖がる存在?OR怖い存在?」というコトなんでございます。古風に「怪談」と「ホラー&怪奇」は別物と考えれば「日本の怪談話というのは主に女を怒らせると怖ーいというコトを語る為にあるんだっ」で終わっちゃいそうですけど、そんな古風過ぎる理屈で怖がらせる映画やドラマも漫画も私の子供時代でほぼ全滅しちゃったし。でもハリウッド系のホラー映画では「怖がるヒロイン」は「ホラーな要因を探り出して問題を解決しようとするヒロイン」でもあったんですね、結構昔から。それがエイリアン/ディレクターズ・カット (字幕版)あたりから「怖がるけど反撃するヒロイン」になったりホラー要素を加味したした事件モノの羊たちの沈黙 [Blu-ray]のような映画に変化して一気にメジャー化していったのでした。で、もちろんそんなハリウッド映画の変遷に影響された部分もあるからこそのリング コンプリートBOX [DVD]を初めてとするジャパニーズ・ホラーのブームが起こり、中田秀夫監督は自作のハリウッドリメイクを作りに渡米して、「一体ハリウッドの偉いプロデューサーたちに何て云われてたんだろう?」ということが漠然と気になっていたのであります。「Oh,no! 美シイヒロインハ、観客二トッテ怖イ存在デアッテハ成リマセン、最終的ニハ観客二希望ヤ自信ヲ与エルモノデナナクテハナラナーイ」などとあまりにもしつこく説かれると却って不信感を覚えることもあったりして・・・結局日本に戻り改めて本格ホラー映画に取り組んだら結果出来上がったのは「あまりにもハイブリットな怪談映画」だったわけだし。

 日本の映画ファンの中には「エイリアン」が登場した時にも「あんな物語全篇通してセクハラだらけの映画のどこにフェミニズムがあるんだっ」って怒って有名になった内田樹先生のような方もいらっしゃいます。なので私よりも遥かにホラー物全般に強くてフェミニズムにも詳しい学者さんがどっかにいて上手に解説してくんないかなあと思ってたりするんですが、誰かいませんかね。

 

 

 

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