読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

もうすぐ死んじゃう女 ③ 「ある愛の詩」のアリ・マックグロー

 

ある愛の詩 [DVD]

ある愛の詩 [DVD]

 

かの「カップルが海辺で水掛け合っちゃう」イチャイチャシーンはどこから来たのか?

 フッフフフ・・・それはこの映画からだぜぃ(大爆笑)! あとやっぱり大昔のCMのダジャレコピーで「愛は後悔しないこと・・・つまり船には乗らないことネ」と武田鉄矢が何故かオネエ言葉で叫んでいたのを思い出す。それぐらい私の子供の頃に有名だった映画、いまどきの小、中学生にとっちゃタイタニック<2枚組> [Blu-ray]あたりが相応する、それぐらい「ベタな恋愛映画」の決定版さ!ついでに言うと物語の舞台はハーバード大のあるボストンなんで海よりは雪の降る大学構内なんかで二人が雪合戦(監督指示による即興芝居だったそうな)やるのが当時有名になりました。ニホン人はその前に帰らざる河 [DVD]あたりでマリリン・モンローロバート・ミッチャムが池に入って少しほっとしているシーンあたりをごっちゃにして受け取ったのかもしれません・・・と言う訳でカップルが海水浴に行ったら、まず海水を掛け合うという儀式をするのが長いこと日本の男子の憧れになったのではないかと。もっともいまどきの若いオトコが観ると主人公の「無防備」ぶりがちょっとだけ怖いかもね。

「・・・とにかく決して後悔しないこと」を地でいくヒロイン(主演女優)

 映画の企画はどのようにして開始されたのかについてはいろいろなエピソードがすでに知られておりますが、やっぱり一番強力なのはアリ・マックグロー自身が脚本を見つけてパラマウントに売り込んだっていうことですかね。彼女は大学生の時にモデルから映画界入りした時点でファッション雑誌等では有名だったらしい。いわゆる「個性的な時代の顔」で、映画スタジオが見出したり演技学校から出たたたき上げじゃない。70年代の映画産業は事業規模からいっても斜陽化してて、「君ってイケてるよ」と一部のマニアック業界人に持ち上げれていた程度の鼻っ柱の強い若い女でも強気で営業できたのでしょう、きっと。映画のプロデューサーで後にアリの夫になったロバート・エヴァンスだって当時30代、監督のアーサー・ヒーラーはTVドラマの演出出身とそれまでのハリウッド大作を手掛けていたようなタイプではないし、ホントに「安い予算でがっぽり儲かる」タイプのヒット映画のはしりだったのでした。で、こういうビジネスモデルで手堅く稼ぐやり方をハリウッド以上に洗練させていってるのが現在の日本映画界だったりします。(笑)脚本担当のエリック・シーガルが小説版をすべて完成されていないうちから撮影が始まり、小説刊行のすぐ後に映画公開され双方大ヒット! メディアミックスのはしりとされているのですが、どうも手さぐりで必死に映画製作にこぎつける為いろいろ工夫するしかなかったみたい・・・ということがDVDの特典映像を鑑賞するとよく判ります。当時のアリ・マックグローは既に30才前後なんだけど、割に子供っぽくて年下のライアン・オニールの一緒でも充分お似合いな感じ。撮影中はプロデューサーのエヴァンスと恋愛中ですでに妊娠していたんだそうですが、アリが演技に入れ込み過ぎて例の雪合戦のシーンでもエヴァンスさんは気が気じゃなかったそう。

決して後悔はしないけどぉ・・・

 ま、映画の内容は説明しなくとも「だいたいご想像通り」の展開しかないんですがDVDのパッケージや紹介にあるような「身分違いの男女の悲恋」というようなコトは殆ど描かれていないので拍子抜けする、ということだけ付け加えて置きましょう。それよりも大事なのは映画の主人公二人の出会いとお金の無い新婚生活に突入していくまでの「人生設計」というのが当時の米国の高学歴で中の上階級に至る若い夫婦の在り方としては最も平凡で堅実なパターンだということです。私が愛読している翻訳ビジネス書にとなりの億万長者 〔新版〕 ― 成功を生む7つの法則というヤツがあるのですが、そこで医者や弁護士等の高収入でひと財産成した専門職の個人事業者の方たちってのは皆主人公のオリバー&ジェニファー夫婦みたいに、若いころ学生結婚して奥さんの方が教師等して稼ぎ、その間に夫が資格試験受けて出世の糸口を掴むというパターンを踏んでいる。それだからこそ、当時の観客は映画の最初のシーンではベタな芝居に照れてくすくす笑い、そしてラストには皆号泣できたのでしょう。要するに若者以上に中年以降の観客にとっても身につまされる内容だったってことよね。雪に覆われたグランドのベンチに一人で座るライアン・オニールの姿から始まって最後の最後にまた出てくる、そこで映画は終わる。中年も老年もライアン・オニールの気分になっちゃって「愛とは決して後悔しないこと」なんてナレーションがかぶったらそりゃあ泣くよ、だって充分結婚生活楽しかった平凡なヒトが自分の将来や老後を想像してしまうわけだから。

「何事も後悔はしない女」の破壊力

 アリ・マックグローは「ある愛の詩」成功後、パラマウントの重役夫人としてエヴァンスとの間に一児をもうけ普通なら幸せの絶頂を迎えるところなのに、「ゲッタウェイ」で共演したスティーブ・マックイーンの元に走り、結局7年結婚したところで捨てられてしまいます。スティーブ・マックイーンの伝記ドキュメンタリー映画をTVで観たことあるんですが、マックイーンとのなれそめ等のエピソードを窺う限りは、結局アリ・マックグローって気が強いだけの世間知らずなお嬢様っぽい女なのか、という感想をどうしても抱いてしまいます。しかしアリと離婚したマックイーンは末期がんに罹って死去してしまうし、エヴァンズPの方はかのゴッドファーザー [DVD]を手掛けている最中にアリに去られてしまい、その後さらに人生のどん底を経験するなど波乱万丈。ライアン・オニールも徐々にトンデモスター化していくという具合。対してアリの方は映画を干された時期もあったのでしょうが、なんとなくTVドラマに出演したり(昔アリ出演のTVドラマを観た記憶がありますが、当時の中年期の女優さんとしては圧倒的に美人だった)、60代に入ってブロードウェイに進出と思い出したように復活してはそこそこ評価を受けているようすです。彼女、割と「人生のギャンブル」では失敗しないのかも。(笑) それにしても「余命わずか」のヒロイン役で当てた女優さんはご自身についてはタフネスな方が多いような印象をうけます。吉永小百合サマはもちろんのこと、彼女のおかげで「何かしら破壊される」周囲の男どもに対し、総てはいい経験で全然へっちゃらで元気よ♡のアリ・マックグロー・・・、「死ぬ前に・・・」の主演のサラ・ポーリーでさえ昨年日本でも公開された物語る私たち [DVD]では彼女自身の事実は小説より奇なりな生い立ちが紹介されるなど、今回取り上げた映画の主演女優さんたちは薄幸の美女どころか皆さん食えないタイプぞろいなのかもしれません。そういや生前に棺桶に入る経験すると長生きするっていうしねぇ、それと一緒か。(笑)