ロリータちゃんがいっぱい ⑤ 「オズの魔法使い」のジュディ・ガーランド

 

オズの魔法使 [Blu-ray]

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  コドモの頃はこの「オズの魔法使い」の話、嫌いだったなぁ・・・

 だって結局「女の子の為の女の子の話」なんかじゃちっとも無いじゃん。その上勇ましいヒーローだって出てこないし、一体どんなお子様がこんなの喜ぶんだよとずーっと不思議だった。お子様時代だったので「男心のホントの所」は解からないしさぁ。ドロシーって娘は大した理由もなく「いつか此処とは違う、虹の向こうに行ってみたい」と思ってはみたものの、竜巻に飛ばされて魔法使いオズが支配する世界に連れてこられるや「家に帰りたい、叔母さんが家でアタシを待って泣いているわ」ってただ怯えて泣くばかりだし、やってることといったら「頭脳が欲しい」「心臓が欲しい」「勇気が欲しい」のオッサン三人組の世話しながら黄色い道を歩くだけなんだもん。「家に帰りたい」ていう当たり前の動機で動いているけど本当は「She takes threemen somewhere  over the rainbow」の為に働く役目を負っているのが、ドロシーなの。女の子向け児童文学のヒロインとしてはこんなに「都合の良い」扱いになってる話、他にはないわ。だいたい少女小説の主人公というのは、不思議な国に行っても「帽子屋さんアンタいかれてる」と突っ込み入れたり、自分家の庭や近所のどーでも良い風景や植物に対して激しい妄想を抱いたり、骨折して血だらけになっても「いいことを探さなきゃ♡」と笑ってみせたり、屋根裏部屋でインド人とパーティーしたり・・・とにかくさ、どっか皆パンクな女の子たちなんだぜ!

 ・・・でも「オトコ」たちはそんなパンクな要素殆ど無いドロシーの方が好きなんだよね、なんでだろう、まったく。

 ただし、現代の米国ではドロシー=ゲイ・アイコンというイメージの方が強い

 なんだそうで。47歳の若さでジュディ・ガーランドは死んだんですけど、彼女の葬式があった当時のNYではゲイの集会と警察が衝突する事件が起こったそうな。生前ハリウッドから干されたりしてどうもぶっちゃけキャラ女優化したらしく、クビになったMGMの悪口や自分の性的指向についてもあけすけに告白し(バイセクシャルだったから)、勇気あるってんで、特に晩年はLGBT系の人びとに大人気だったようです。だから米国では「ドロシーの友達」っていうと「そっちの気」がある人のことを指す隠語になったとか。そして同性婚の人達が持つ「虹色の旗」はかの有名な「Somewhere over the rainbow」のナンバーからきているという具合。そのおかげか現在ジュディ・ガーランドのプロフィールを検索すると「MGMの契約を取ったのは13歳でプロデューサー達に枕営業したおかげ」とか何とか書いてあるのが多い。彼女は子役時代からボードビリアンとして活躍し周囲からは「この子天才だから映画に出しなよ」って期待されていたのにヒドイ言われようですねぇ。ちょうど同時期に人気があった少女スターのディアナ・ダービンジュディ・ガーランドの二人どちらかを落とさなきゃいけなくなってMGMはジュディ・ガーランドの方を取った。ディアナ・ダービンはヨソの会社と契約し直して少女スターとして一時代を築いたもんですからそう邪推されるのかもしれないんですけど。またその一方ではジュディ・ガーランド父親、愛人(タイロン・パワー)、夫(ヴィンセント・ミネリ)、可愛がったプロデューサー等がほぼゲイかバイセクシャルだったのいうのも有名な話でありまして、未だにノン気のマッチョ男性層とLGBT系の間でジュディ・ガーランド像が綱引きされているというか、彼女自身の評価かが混沌としている印象がします。日本だと彼女に匹敵する存在のスターとしては同時代の高峰秀子とか「歌って演技もできる天才少女」の美空ひばりあたりになるんでしょうが、彼女らの場合は母娘関係を巡る物語があまりに強烈な為か、男性遍歴の話題がでてきてもあまりファンは興味を示しません。日本人からみるとジュディ・ガーランドのような腕一本の芸能人は「ある種男性化した存在」なので恋愛といっても主導権は必ず握ろうとするし、そういうコトを認めてくれるような中性的な男性が好きでも不思議には思わない、でその手の女性は大抵女としては成熟することないから「結局クチで言うほど大したコトはしていない」と判断しがちなのです。

 そういや肝心の映画の話はしてないや・・・

 この映画は風と共に去りぬ [Blu-ray]と一緒でハリウッドで製作された初めてのカラー大作映画のひとつされております。ついでに監督のヴィクター・フレミングは「風と共に去りぬ」も監督していてそっちの方でアカデミー監督賞ゲット。緑と赤の使い方が効果的なのも一緒ですが、「オズの魔法使い」では最初セピア色に着色されたモノクロ画面からドロシーが竜巻に飛ばされて東の国に着くとカラーになる、という趣向になっています。それ以外はとりたてて指摘するような点は無いかも(笑)、21世紀の現代人からみると映画のオチが「君には一体何が欠けていると言うんだい?よく見てごらんよ君はもうなりたい自分に既になっているじゃないかぁ」と説得されて終わるっていう・・まるで流行のスピリチュアル系自己啓発本かよっ、という感想しかないんだもん。原作者のライマン・フランク・ボームてヒトもいわゆるメディアミックスのはしりみたいなのを仕掛けて破産しちゃうとか割と山師っぽい雰囲気だし、お話の内容もRPGのはしりかあ? なカンジがしてます。こういうのを下敷きにして「ウィキッド」なんていう内省的なミュージカルが作られたり、宮崎駿センセーが千と千尋の神隠し [Blu-ray]を生み出すコトの方が却って凄いわ。「千と千尋」を観た米国のおばあさんが「ワタシにはこんな子供時代は無かった」と発言しているのを聞いて、なんでそんなこと羨ましいのかぁ? て不思議だったんですが、「オズ」観てその感覚ちょっと理解できたかも。