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ロリータちゃんがいっぱい ④ 「雀」のメアリー・ピックフォード

 

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 根性、コンジョウ、どこんじょぉお・・・

「何度転んだって、何度だってやりなせる」 

「失敗っていうのは転ぶことではなく、そのまま起き上がらないこと」

「過去は変えることはできない。でも未来はあなたの手の中にあるの」

 以上「地球の名言」http://earth-words.org/archives/5020というブログから借用しちゃった「メアリー・ピックフォードの金言」という彼女自身の発言でございます。しかし凄いっすね、完璧なまでにスターなお言葉、というより「20世紀を代表する偉人」くらいなカンジ。おそらく「地球の名言」の管理人さんはお若い方だろうと思うので(しかもお若いのにアフィ収入いっぱい稼いでいて羨ましいというイメージのキチンとしたブログだった)映画女優としてのピックフォードにはとんと興味がないんでしょうが、故淀川長治センセーにとっては青春時代憧れのアイドル、「とにかく何時まで経っても可憐で上品」だったというのが彼女の身上だったようです。ただ現代の擦れからし女目線からみると、けっこうドヤ顔キツイわこの女、て印象を持ちますが(笑) メアリー・ピックフォードは4歳だか7歳だかの時にはもう舞台の子役で15歳で映画界入り、その後なんと20代後半ぐらいまで十代半ばの少女役専門で女優キャリアを通しました。当時の映画界は照明技術が未熟で、舞台での人気女優(20歳は超えている)をそのまま起用すると、もの凄く老けて見えたそうです。だからサイレント初期の女優は皆十代の少女ばっかり、しかも次第に照明技術が発達していくうちに美貌の賞味期間も伸びていったわけですから結局のところ映画産業黎明期に映画女優のスタートを切ったピックフォードが「最初のハリウッド・スター」と言われるほどのポジションを獲得することができたのです。だからフェミ系映画評論本「ハリウッド・ロリータ」の「アメリカの映画ファンはやたら子供っぽい少女趣味の女性像が好きだった」という指摘は半分正しくて半分は言い過ぎです。だいたいピックフォードの本当に凄いところは女優業では飽き足らず20代でチャップリンと一緒にユナイテッド・アーティストという映画会社を設立、チャップリンとともに「サイレント映画の可能性」を模索し続けたところにこそあるのですから。

 

 囚われた雀(すずめ)たち

 フロリダの湿地に住んでいるグライズム夫婦という悪党の一家がおりました。こいつら生活費を稼ぐために子供の世話ができない母親たちに代わって子供を預かるといいながら金だけをふんだくり、9人の小さい子供と彼らの世話役といえる13歳モリ―(メアリー・ピックフォード)を一日中農園で働かせ、家畜小屋に閉じ込めていました。モリ―は明るく元気な女の子でいつも張り切って子供たちの面倒を見ているのですが、グライズムの家からは飛び出そうという意識だけは芽生えない。子供たちがモリ―に「神様はいつになったら私たちを此処から連れ出してくれるの?」と聞くとモリ―ったら「神様はあの小さい雀たちをかまうのが先なのよ」なんてことしか返さない。一冊だけあるキリストの絵本を子供たちに読んで聞かせることにより、子供たちを落ち着かせられるというかモリ―自身が自分の不安や悲しみを癒している毎日だったのでした。ある日一人の男の子が誤って家畜小屋に隠れるのに失敗し、グライムスの近所に住む農民に見つかって、その農場に売られてしまう(グライムスは子供を働かせて親から金をせびっているのがバレると大変なので)というのに、モリ―と子供たちは「いいなあの子はグライムスの家から出られるんだっ」と祝福しちゃう。男の子自身も、なんか申し訳ないなあなんて顔しちゃうし。そんな男の子を見送って家畜小屋から小さい手がヒラヒラ舞うのさ、バイバイ元気でねって。・・・現代人にとっちゃ名高い後半の活劇シーンよりこういった処にこそグッときちゃうかも。一人小さい赤ちゃんが栄養失調でずっと泣いていてついには死んじゃうんだけど、モリ―には赤ちゃんが天に召されて神様のトコに行くんだわって空想するとかね。こういう時のピックフォードはさすがに品があります、今の時代には無い賢さを備えた女の子ってカンジ。早くこんな家畜小屋出ちゃえばいいのにぃーと歯ぎしりしてしまいますが、ホントにしっかり者で根性のある娘は、ガマン強くて慎重なのよ。

 絶対「アイツのこと」はライバル視していたよね♡

 一緒に会社設立したチャップリンはすでに「キッド」という映画で伝説の名子役ジャッキー・クーガンを起用し成功させていました。「雀」でも9人子役が登場してきますが、どの子もホント可愛くて生き生きしています。ただこの映画は後に実写ではなくディズニー作品のアニメに影響を与える結果となったのが、ピックフォードの映画人としての評価には繋がらなくてサイレント映画が終わって忘れられた女」みたいに言われてしまったのが気の毒とは言えるかな。でもこの時彼女はすでに33歳で結婚2回しているわ、貯金もがっちりあるわ、バツ2なのに女優としては長年トップに君臨・・・という状態だったので、彼女自身がやりたかったコトと言えば「ライバルに負けないモノを作り続けること」、要するにチャップリンに対抗して映画製作を考えるくらいのもんだったのではないでしょうか。だってアタシの方が子供の扱いは上手いんだからって(笑)・・・でもそれはそれでチャップリンやその他の芸術家気質の映画人にしちゃ彼女のコダワリはトンチンカンなものと取られていたかもしれませんけどね。現代人がピックフォードの人となりについて知る資料としては同時代の映画監督のマック・セメットの著作やチャップリンの伝記映画でのイメージが主になっているので、凄く野心家で意地悪な女性と思いがちです。実際わざわざヨーロッパからエルンスト・ルビッチなんて巨匠をハリウッドに連れてきてそのくせ顎でこき使うとか、結構酷い(笑)正直うざいんだよなぁ・・・コイツときっと業界では思われていたことでしょう。

 だけど、メアリーの生涯は絶対ハッピー・エンドだよ♡

 「ハリウッド・ロリータ」では、ピックフォードの気が変わって髪型を変えたところで人気が急落し、引退に追い込まれ世捨て人にようになってしまったと述べていますが、実際には引退後も裏方としてかなりの間映画製作に関わり、3度目の夫との結婚生活は円満で養子も迎え、化粧品会社を興したりもしています。女優としてもトーキー導入後に当時の夫ダグラス・フェアバンクスと共演して難なく成功したのに、結局引退したわけですから(悪声だったりスウェーデン訛りがキツくて大変だったスターと比べりゃ)ハリウッド生活はずぅっと勝ち組で傍からみるとやってた女なのです。そんな彼女の真心から出た金言が要するに「根性で頑張れば道が開ける」というんですから。ピックフォードの She takes us to~ のパワーは映画の中でも外でもとにかく凄かったということでしょう。映画スターなんて辞めようと思えば、いつでも辞められる、だってそれはもともとアタシ自身が作り上げたものだから。IT時代の黎明期を造った起業家が業界が成熟していくうちに起業家自身の興味が失せていって、すっかり別のことに打ち込んでいます、みたいな話なのかな。