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ヤサグレ女列伝 ⑪ 「チアーズ!」のキルステン・ダンスト他

 

チアーズ! [DVD]

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  まだ90年代の雰囲気がいっぱい

 まあ日本公開で2001年ってとこだったし、無理もないかなあとも思うのですが、それにしても90年代どころか、まるっきりビバリーヒルズ高校白書 シーズン1<トク選BOX> [DVD]ですかね?てな設定が見え見えの部分がある。出てくるのはTVゲームにラジカセ、自分専用の防音装置が付いた部屋、固定電話をかけると留守電ばっかりでヒロインがキレちゃうとかさ・・・映画に登場するチア部のオーデションシーンに何故「なだぎ武のディラン」が出てこないのが不思議なくらい(笑) でも本編では監督自身が頑張って踊ってる所があるのだそうだ、ご愛嬌だね。実をいうとこの前やった「チアリーダーズ・オール・ダイ」は「チアーズ」に登場する女の子たちのキャラクター分布をそっくり踏襲して、かなりお下品にパロディ化しているがよく判ります(笑)、アタシはたまたま「オール・・・」の後に「チアーズ」を観たもんで「チアーズ」の冒頭の主人公トーランス(キルステン・ダンスト)が見る夢のシーンでようやくいろんなコトが府に落ちました。オール・チアリーダーズ・ダイ [DVD]では「何故よりによってこの娘なの?」という、ちょっと無理やりな「ポロリ♡」サービスシーンが見ものなのですが、ああいうのも「一つの執念」ってことなのね・・・で、今回の「チアーズ」は「オール・・・」のようなヲタク系映画人の趣味からは遠く隔たったあくまでも爽やか健全映画なのでぇす。

 

 「競技チアリーディング」を馬鹿にしないでよねっ!!

 カルフォルニアの高級住宅地にあるポンチョ・カルネ高校のチア部は超名門、トーランスは最高学年になってそのチア部のキャプテンを任されることになったのさ。先輩キャプテンの赤毛娘(笑)はトーランスに「あんたはさ、アタシが教えてあげた振付をしっかりチームにマスターさせれば今度の大会でもばっちりだから、きっとまた全米一位になるよ」という言葉を信じて、とにかくチームの信頼を勝ち得るだけでいっぱい、いっぱいのまま新学期を迎えるのでした。クラスには転校生の男の子クリフ(ジェシー・プラッドフォード)がやってきて、ちょっと興味を持たれてるみたいなんだけど、自分としちゃそれどころじゃないし、そもそも大学に行ったチア部の先輩の彼氏がすでにいるしね。そんな折、チア部の主要メンバーが練習中に大けがして戦線離脱・・・もうそれだけでトーランスのキャプテンの地位が揺らぎそうなのに、やっとこさ代わりのチアメンバーを引っ張ってきたと思ったら、その娘ミッシー(エリザ・ドゥシュク)いわく「アンタ達のチアダンス、絶対にパクリよ。私が前に通ってた高校のチア部がそれと寸分たがわぬパフォーマンスをやっていたのを見ていたもの」とさ。ミッシーは兄クリフと一緒にLAの下町の高校に通っていたから。で、実際にLAの高校へ行くとそこのチアチームはキャプテンのアイシス(ガブリエル・ユニオン)を中心とする黒人ばかりのチアリーディングで、トーランス達は「前キャプテンが創作したと信じていた」ヒップホップ風のパフォーマンスをそのまんま、なお且つト―ランスのチームよりずっとクールにカッコよく演っているのに遭遇してしまう。もぉ、ただでさえクソまじめで単純な性格のトーランスには大パニックで全身がブチ切れそうなのでありました。

 

 熱血部活女子が暴走するだけのことなのに

 それでも年頃の女の子たちが集まって(しかも皆超ミニスカートでさ)、特訓始めたりしちゃ目立つわな・・・という感じの展開になっていきます。とにかく大会までに、新たなパフォーマンスをチームで作り上げなければならない。ポンチョ・カルネの「チーム・トロス」のウリはなんたって独創性にあるんだから! とはいえ最初は時間も無いので、大学の彼氏に「チアリーディングの振付をしてくれるプロ」を紹介してもらい、プロの指導によるヘンテコなロボット・ダンスで勝負したところ大会の予選では大失敗・・・(いろいろあってね)。トロスの女の子たち総出で水着姿のカーウォッシュのバイトまでして講師料捻出したのにさぁ。キルステン・ダンストのトーランス像というのは、ある意味とってもダサい女の子。というか日本だと「田舎によくいるよね、こういう狭い地域社会のなかでやたら張り切っている娘」って評価されるタイプかも。家に帰れば(どうも高学歴のインテリらしい)母親に「チアよりもっと勉強や将来設計のことに打ち込んでほしい」とか言われちゃうけど、彼女としては自分が今一番必要とされている場所で思いっきりはじけたいだけなの。全米一のチアリーディング女子高生になったって、将来それでどうにかなる訳じゃ決してないけどさ。子役時代から婆さんになっても女優できそうな、つーか十代の女の子としてはあんまり魅力無いフェイスというか(笑)なキルステンが演るとこういう人物像がとても説得力を持つし、好感度大。今でも彼女の出演作としては代表作のひとつになっているのも当然ですね。そんで、LAの黒人チア・チーム側のアイシスとの交流も嫌味がない。とにかく慌て者で世間知らずのお嬢様トーランスですが素直な性格で頑張り屋、よほどのへそ曲がりでない限り共感できるはず、まあ映画の脚本が上手かったからってのも大きいが。

 

 ・・・それでもチア・リーディングは「侮蔑されていない」のかいっ?

 予選でボロボロになったトロスではありますが、何とか過去の実績のおかげで大会本戦に出場できることになりました。で、一発逆転を狙っていちから自分たちでチアのパフォーマンスを作り出そうと特訓を始めます。トーランス今度は特別なやり方はせずに高校フットボールチームの応援で場数を踏んだり、社交ダンスやら体操やらを組み合わせた、要するにチアリーディングとしては王道のパフォーマンスを完成させていくのです。終盤かなりの時間をさいてフロリダの大会を描くのですが、そこでの見ものは主にチアリーディングのようなものに熱中するようなタイプな「見ていてちょっと痛いんだけどそこが可愛い♡」若い女の子たちの群像のようなのです。逆にトーランスのチームは自信満々で、そこが観ていてちょっと怖いくらい。そんな中ライバルのアイシスの高校のチア・パフォーマンスがたっぷりと映画の中で展開されます。やっぱり凄いわ、でもアタシ達だってさぁ、ということでトロスの出番が始まるや今までスポ根モノとして力入れて観ていた方はずっこけることでしょう。肝心のトロスのパフォーマンスはとにかくカット割り激しくてせっかく練習した成果の詳細について観客が理解することはできない。具体的にいうとチアリーディングのキモともいえる隊形(フォーメーション)の変化なんてのは観られないような撮り方をしています。集団としての演技の素晴らしさよりもそこで演っている女の子たちの笑顔を単独で抜くカットにこだわるわけ。日本人のアタシらからみると甲子園の高校の応援団全体を映すよりも、そこで選手達の活躍に一喜一憂している美人の女子生徒のアップにこだわる○H○の中継のようです、ちなみに私は甲子園の中継は女の子をバカにしているようで最近は視聴するのを止めちゃったし、特訓している主人公チームのパフォーマンスをこんなシーンで仕上げられるのって屈辱的にしか感じないけどね、日本や韓流アイドルでもこんな扱いされないよ、びっくりしたわっ。

 

 でもNBAのチア・リーディングの扱いも・・・

 映像的にはこの「チアーズ」とおんなじような「やたらと、カットバックしてチームの女の子たちのイケてるアップ」ばっか次々出てくるらしい。このブログ更新する前にチアリーディングについてのバラエティ番組をTVでやっていて観といて良かったよ。どんなにマツコ・デラックス御大が「チアについての誤解」について反省したとしても、アタシできないや。そういや大昔(日米摩擦の激しい頃)だったか、実家の父は「チアガールなんてのを必要とする米国っていうのは男女差別の激しい国に違いない」と訳の分かんないことを言っとりましたがね。まあそこまで過激には思わないけど、やっぱりチア・リーディングってのは「女司令官が仕切るアマゾネスみたいな女の軍隊」でしかないのかなあとは感じます。普通のアメリカ男にとっちゃ実は正視するには耐えがたい程に怖いものだったりして(笑)。ヒップ・ホップ風のアイシスのチームのパフォーマンスは男女がフラットに対峙していて、トロスのような正統派のやつと比べると両性具有的ですらあります。アイシス達が映画の中で「私達は自分たちが住んでいる地域の象徴のような存在といえるのよ」と主張してましたが、テクノ・ダンスの得意な監督をはじめ製作陣は「強気の軍隊っぽい」チアよりもうちょっと平和的なチアにパフォーマンスにトレンドが移って欲しいだけなんだよなぁ・・・とやんわり釘を刺したかっただけかもしれませんけどね。