ヤサグレ女列伝 ⑩ 「デス・プルーフ・IN・グラインドハウス」のヴァネッサ・フェルリト、ゾーイ・ベル他

 

  無理やり「豪華二本立て興行」

 だったもんで、公開当時は「グラインドハウス」と称し「デス・プルーフ」とロバート・ロドリゲス監督作「プラネット・テラー」、そして「架空の映画の予告編」も合わせたスペシャルな興行スタイルで当時全米だけでなく日本でも話題になりました。私が観たのはもちろんDVDなんですが、なんか一番子育て期の鬱屈がピークに達していた頃だったのか手慰みにTVドラマや映画を観てもイマイチ楽しくなくて、何故だかセックス・アンド・ザ・シティ シーズン 1 [DVD]なんか観ていると気分が落ち込んでくる理由が分からず困っていたのを思い出します。そんな時たまたまこの映画観たらすごくホッとして鬱な気分が少し晴れました。この映画での「ガールズトーク」というのはNYの気張った美熟女たちの恋愛トークと比べると凄く普通です。都内の飲み屋ではしたなく怪気炎を上げている「ヤサグレた女子会」のノリとあんま変わらない。なんだぁ、米国も日本も結局は一緒なんだ・・・良かった、て思ったよ。亡くなった(大正生まれ)シナリオの師匠は、でもコレ観てどう感想持つかなあ、「駄目じゃないか、君だってまだオトコ盛りってとこだろ。もうそんなにも起たないのか!」て男性の主役(カール・ラッセル)に対して怒ったりして・・・(笑)。ま、女性がいろんな意味で社会参加の仕方がスケールアップしてくると、70~80年代にかけて隆盛を極めたエクスプロイテーション映画の内容もだいぶ変わってくるんだよという意図も込めた「B級映画万歳!」作品なのでしょう、きっと。

 

 耐死仕様(デス・プルーフ)車に乗っているオッサン

 乾いた夏の季節のテキサス州オースティンにアーリーン(ヴァネッサ・フェルリト)は久々帰ってきた。故郷では親友で地元じゃ美人ラジオDJとして大スターのジュリア(シドニー・ターミア・ポワチエ)が歓待してくれて、女5人で楽しくドライブ中。きゃあきゃあ騒いでいると後ろから何か不振な車が自分たちを尾行してくるような気がアイリーンはしたのだけど、不振車は距離を取って特に何かを仕掛けるような感じはないのだ。陽がおちて彼女たちはいきつけのバーへと繰り出し女たちだけで、飲んで騒ぐ。地元の若い男たちはそんなジュリアたちを見て「絶対あの娘を落としてみせるぜ」なんてひそかに言ってみたりするけど、声なんてかけられないのさ。そんな店に「スタントマン・マイク」と名乗る中年男(カート・ラッセル)がやってくる。彼の話じゃ結構名の知れた映画のスタントマンらしいし、彼の話す業界の話(特にカースタントについての話題)では店の客は結構も上がる。でも「ワタシが一番の女王様」と自負しているジュリアだけはマイクのことも完全無視だけどね。アーリーン&ジュリア五人組のガールズトークは男性観客にとっちゃ退屈だけかもしれないけど、なかなか「女同志の激しいマウンティング」なやりとりはアタシなんかにはスリリング。ジュリアはラジオで「ワタシの古い友達(確かアイリーンのことをこの時「バタフライ」と呼んでたと思う)が今夜お得意のポールダンスを披露してくれるわよ」なんて話ちゃったもんだから、アーリーンが困っちゃうのとかさ。傲慢に振る舞う一方でジュリアは内心こんな地方のミスDJから連れ出しくれそうな映画関係者にずっとモーションかけていた。だからひそかに彼の電話がくるのを健気に待ち続けている。ド田舎のバーで昔のしょぼい自慢しているマイクと久しぶりに再会した男友達相手に「旅の恥はかき捨て」のごとくカーセックスしちゃうアーリーン、それにジュリア、同じくアーリ―ンの古い友達なのにジュリアのグループから無視されているやや頭の悪そうな美人のパム(ローズ・マッゴーマン)等、グダグダな芝居から一気に「殺人鬼によるガールハント」へなだれ込んでいくまでを皆さんまずは堪能しましょう。

 

 タランティーノは果たして「足フェチ」なのだろうか?

 まず一見するとカート・ラッセルVS「その他大勢の女優陣」という印象で、無名の女の子たちがにぎやかしに登場しているようにも感じますが、いろいろ調べてみると彼女たちの中には後にスコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団 The Ultimate Japan Version [Blu-ray]の主役ヒロインになった娘や、他のメジャーハリウッド作品でもきちんと活躍している方いらっしゃいます。前半部の「テキサス州オースティン編」では主にTVドラマで活躍している女優チーム、そして後半部「テネシー州レバノン」では映画で活躍している女優&スタント・ウーマンのチームといったところ。後半部の冒頭シーンでメイク担当のアバナシ―(ロザリオ・ドーソン)達3人が迎えに行くのが、ゾーイ(ゾーイ・ベル)というスタントウーマンなのですが、彼女自身が現役のスタントウーマンで過去既にタランティーノ作品に出演済といった具合。ゾーイってニュージーランドの生まれなのですが、いわゆるニュージーランドっていうだけで、女性といえど「かなりのデンジャラスマニア」なのが伝わるかもね。そんなことはつゆ知らず、マイク再び登場、車の中で居眠りしているアバナシ―のいかにも柔らかそうな踵を指先でなぞっちゃったりするのさ。もう観ているこっちはオースティンでのマイクの所業を思い出して、早速カチンときちゃうね。でもマイクはオースティンの時の成功を思い出し、新たな獲物を見つけて浮かれちゃったのかもしんない。今度の娘たちはアーリーン達よりもさらに見た目が「よりフレッシュで素朴」に見えるし、車のガールズトークも身持ちの固い潔癖な性格のアーリーンの恋愛話で盛り上がるくらいだから、ターゲットとしてはよりやり安そう・・・タランティーノ脚本による女の子たちの会話はここでもまったく内容なさそうだしさ、ド田舎のハイウェイにあるコンビニでイタリア版のヴォーグを買うことに何の意味がある? ホントいい歳していつまでもミーハーなバカ女どもじゃんかってね。でも彼女たちの歩んできた履歴や積んできたキャリアはそういう「どんなトコでもヴォーグは読まなきゃ」っていうエピソードの積み重ねでしか説明できないの。ブランド趣味なんかも含めたディテール表現をどんだけ上手にできるかが、「女性映画」としての魅力のキモだから。で、レバノン編の女優チームの中にはスタント・ウーマンの二人もいて彼女らにはコアなマニアの一面がある。ゾーイとキム(トレイシー・トムズ)の語るB級アクション映画の話だけ聞いているとまるで「男たちの専売特許」を侵してくるみたいでちょっと脅威に感じるかも。映画界で仲良くなった彼女たちは同時にそれぞれ専門分野のエキスパートなんだよ、だからオースティンの娘たちよりも「自立」している。今回おおぜい出演している女性キャストのなかで興味深いことがいっぱいあったんですが、それを踏まえてオースティン編とレバノン編の大きな違いって何じゃろうかって疑問は尚も膨らんだもんです。気が付いたのはオースティン編の娘たちは「女の子って皆こういうの好きだと思うー」とのたまうようなマーケッティング通の女子が考えるような女の子像だわね。レバノン編の娘たちは「女の子はだいたいコレが好きだろうって決めつけたがるけど、アタシは違うからっ」てやたらと言い張るタイプ。どっちも男からみたら面倒くさいし、同一人物のくせして「女の子皆こういうの好き」と「皆が好きっていうけどアタシ違う」を使い分けるタマがごろごろ存在するので、「オノレいい加減にしないとひき殺したろか!」「うるさい、アンタがキモいだけよっ!」という喧嘩が始まるわけですね。(笑)オースティン編とレバノン編どっちも「脚線美を誇る黒人娘」(シドニー・ヴァネッサ・ポアチエとロザリオ・ドーソン)がチームを代表するアイコンとしてフューチャーされるので男性の観客はタランティーノの足フェチ趣味が爆発した映画として認識している方が多いようです。でも映画監督という人種は自分のフェチ趣味を日々ブラッシュアップしていかないと演出プランが成立しないのですよ、足以外にもフェチなモノいっぱいないと、監督稼業は務まらないのっ。

 

 熱愛発覚した女優もいるよ

 そ、この映画製作前後にロバート・ロドリゲスをはじめ三人ほど、映画監督と交際するようになった方がいらっしゃいます。それも全員90年代に映画監督デビューしたヒト達だったはず。何故なのかは分からないですが、もうそんなにも「駄目なのかい、アンタだってまだ若いのに」って心配したのが杞憂だったってことなのね? 映画の終盤にマイクがまるでアバナシ―による「必殺踵落とし」で絶命したような効果音があるし数々の女の子のショットでラストシークエンスが続くのがなんか切なくて寂しい気分になったから、そんなんじゃダメじゃん、もっと勇気出してアタックしなよ!って思ったもんさ。そして女優さんたち映画出演時にはすでに大半が30代前後のお年頃で、無名にみえてもそれぞれ実力のある女ばかりのようですけどね。DJジュリア役のヒトなんて伝説カップルのシドニー・ポワチエ夫妻のお嬢さんなので、どうしてアナタのように大物二世でしかも才色兼備(ウィキペディアよると)なのに「業界に憧れているはすっぱな田舎娘」みたいな役演るのさと私思いました。シドニーさんは現在でもたまにTVドラマの脇役で出演するぐらいのようですが、単に本人がマイペースで活動したいだけの印象を受けます。ヴァネッサ・フェルリト嬢にしてもCSI:NY コンパクト DVD-BOX シーズン2のレギュラーだったのにあっけなく「執念で追いかけてた殺人鬼の犠牲者になる」というエピソードで有名になった人。でも彼女としてはTVドラマもいいけど舞台出演の方を優先したかったんだってさ。普通の職業として女優業を選んだもん、女の子なら皆がそうするって言ってもアタシは違うのよ!というタイプのメンバーを贅沢にキャスティングした映画ということだったのですかぁ。タラちゃんも50過ぎたら監督疲れるから引退するとかいうのよしましょうね、まだモテたいんでしょ。