BL版 ゲイでいいとも!?②  「成功の甘き香り」

 

成功の甘き香り [DVD]
 

 極私的にお気に入りのボーイズ映画

 ・・・とでも表現するほかない映画です。TVで観た時はそのあまりのテンションの高さに驚いているうちにあっという間に終わってしまったのですが、実をいうとこの映画のプロットというのが、

 「NYブローウェイの劇評コラムニストであるJ.J(バート・ランカスター)はメディアや大物政治家にまで影響力を及ばす実力者、彼は自分の妹スーザンが新進のジャズ・ギタリストと恋人同士なのが気にらず、子飼いのプレス・エージェントのシドニートニー・カーチス)に命じてスキャンダル記事を流し、二人の仲を裂こうとするが・・・」

っていう内容だけだったりするのさ、それだけで97分もあるの。よく考えてみたらそっちの方が凄いことかもね、その間ずーっとバート・ランカスタートニー・カーチスの丁々発止の演技が中心なんだもん。でも結局のところ何故J.Jって奴はこんなに威張ってんのか、邪険にされてもシドニーはJ.Jに尽くそうとするのかがワタシにはとても分からない、二人が同性愛者だとでも仮定しない限りは。この映画現在では米国立フィルム登記簿に登録された程名作とされていてAFI悪役ベスト100の中でJ.Jは堂々35位に入るというユニークなキャラなんだそうです。日本でも田辺聖子様がこのバート・ランカスターを絶賛しております。あと、手塚治虫の短編漫画で「成功のあまきかおり」というのがあるそうで、雑誌発表が1976年。1976年ごろの手塚作品で有名なものといえば、何といってもボーイズラブの金字塔「風と木の詩」に真っ向対抗して連載された「MW」でございますね。

 

 このプロットに対して「これだけの尺(長さ)を持たせる」のねぇ・・・

 とはいえ、「成功の甘き香り」とよく似たプロットの映画でIVCベストセレクション 暗黒街の顔役 [DVD]なんてのもありますので、ハリウッドが原作小説を読んで映画化しようと思ったのも無理はないような、典型的な「ある種のギャング」ものでもあるんですよ。でも「暗黒街の顔役」の場合はまず暴力で街を支配する過程においてのサイドストーリーとして「やたら血縁関係にある妹に執着」というエピソードなのでもっと重層的な印象を与えるのですが、「成功の・・・」J.Jは顔役の兄貴と違って、巷の女には目もくれないというか、ほぼ女嫌いにさえ感じる。妹の恋に嫉妬して反対するのも妹を独占したいというより、「お前(妹)ばっかりにいい思いさせてたまるか」というねたみの感情からきてんじゃないのって感想をまず持ちますね。一方のシドニーはひたすら軽い女たらしでスキャンダルを仕掛ける際に自分のガールフレンドを依頼する記者に報酬として差し出しちゃうような男、また彼も本気で女性に向き合うタイプではないのです。この二人ひたすら何かに強烈な欲求不満を抱えていることは間違いないのですが、結果的に「精神的な同性愛者」としてお互いくっつかざるをえなくてそれでいて二人とも根っこでは軽蔑し合っているみたい。そういう意味じゃ、通常のヒーロー映画に登場する典型的悪役コンビが実にクールに二枚目しているという珍しいピカレスクドラマでいいじゃんという方もおられるでしょう。でもピカレスクドラマだとこの映画よりは悪党としての美学の芝居どころがあるもんね、けど「成功の甘き香り」にはそんなカタルシス無いからさ。代わって強烈に圧倒されるのは、目まいがするぐらいのモラルや常識についての価値が混乱してくる感覚ですね。超人工的な街であるNYの、それこそフェイクな日常を作り出す演劇というものに精通しているJ.Jがやがて人々の意識を徐々に支配して、現実をも変えていくのが描かれているのが怖い。身内の敵にやきもきしているだけのJ.Jだったらまだ良いけど、最後シドニーをも切り捨て、妹にも去られようとしているJ.J自身の崩壊と周囲におよぶ災厄を予想するだけでも、乾いた哀しみがあるよねってんで映画が終わるのだよ。

 

 成功の甘い香り⇒疑似フェロモン⇒環境ホルモン

 当初この映画のタイトルに「甘い香り」なんて言葉が入るのか理解できなかったんですが、そういや主役二人の演技がまるで蠢く虫のようだわっ・・・だったのに思い当りました。例えて言うと捕まえられたかぶと虫達が異種格闘技戦を強いられているのを見物しているよう。キャラがなんか虫っぽい、といえば手塚漫画だよねっていうことで映画ファンとして知られる手塚先生の映画の感想コメントでもあればと軽い気持ちで検索したところ、前述した短編漫画がでてきた訳です。で、内容は女の子が化学で作りだす媚薬を巡るドタバタ漫画らしい。私自身は「MW」、「風と木の詩」とも未だ読んだことが無く数年前に東宝が映画化を企画した際プロットを依頼された人間が時代研のメンバーだったもんで、会合で感想を求められて初めて「MW」の内容を知ったぐらいなのさ。その時数人いた女性メンバーの意見が「今更、事故による化学物質の汚染の影響で主人公二人が同性愛とか猟奇殺人とかに走るって設定て陳腐じゃねぇ」という雰囲気につい集約されてしまいました。「だって異常心理だの同性愛だのって最終的にはビジュアルにはしにくいものでしょ、(ポーの一族みたいに)化学物質に侵されて吸血鬼になっちゃうとかしてくれた方が分かりやすいよ。」などと当時適当にほざいたバカ女がいた所為もあるのですが、ちなみにそれは私です(笑)・・・とにかく手塚ファンにはごめんなさいと謝ります。あとどう考えてもにっぽん昆虫記 [DVD]のコンセプトを手塚流にアレンジしたとしか思えない「人間昆虫記」なんていう作品もあるそうなので、手塚漫画と映画との関連で読むのもコアなファンには楽しいのかもしれません・・・とフォローして終わることにしますっ。