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緑の女 ② 「あなただけ今晩は」 のシャーリー・マクレーン

 現在でも未だ現役

 例えばAFI等という機関が「偉大な女優ランキング」を作成するならば本来かなりの上位に入るはずの実績を誇るシャーリー・マクレーンではありますが、今だに主役級のオファーがあって普通に出てくるので、却って評価が定まらないのでしょう。50年〜60年代にかけてはオードリー・ヘプバーンと並び立つ「おしゃれ女優」で、オードリーが主にヨーロッパのオートクチュールプレタポルテを着こなして同時代の女性の憧れを体現していたのと比べると、シャーリーの方は平均的なアメリカンガールが着こなす「カラフルなアメリカンアパレルで当時の女性たちの購買意欲を駆り立てていた存在だったと思います。彼女のロマコメ時代の絶頂期にあった映画何という行き方! [DVD]とかAsk Any Girl [VHS] [Import](後のやつは米国内でもDVD化されてないのかい? 惜しいねぇ。カラーでちょっとエッチになったシャーリー版の「麗しのサブリナ」みたいな話で面白いんだよ)を観るとホントぶっ飛んだ色彩だけど一瞬着てみたいかも・・と錯覚するくらいシャーリーの衣装が可愛い。かの有名なイディス・ヘッド女史もオードリーがジバンシーの元に行っちゃった以降はシャーリー・マクレーンの映画で気合いの入った衣装を見せることが多かったようです。映画デビュー作もいきなりヒッチコックのカラー映画第二作(画面の色彩設計が気合い入っているので一時第一作目と紹介されていたくらい)のハリーの災難 [Blu-ray]てやつですからまさに本格的カラー映画時代に突入で出現してきたスターです。

 コメディ映画としての「キモ」

 パリの警官ネスター(ジャック・レモン)はやたらと堅物な男。レアール(パリの中央市場)近くの娼婦がたむろする界隈に新規に配属されたのに張り切っていきなり娼婦たちを一斉検挙して刑務所に入れたのはいいんですが、街娼の客の一人に警察のおエライさんが混じってたのにも気が付かず一緒に連れて行っちゃうもんだから、あっさり警官をクビにされる。ネスタ―は事前にビストロオーナーのムスターシュに賄賂もらってうまくやりなよと忠告されたにも関わらず無視した結果そうなっちゃったもんだからビストロでヤケ酒のんでいたんだけど、そこで一目ぼれした娼婦のイルマ(シャーリー・マクレーン)のヒモであるピポリートが彼女を終始暴力的に扱うのに頭にきて勢いでやっつけちゃう。イルマはそこで「ネスタ―、アンタ大好きぃー」ということであっという間に二人はできちゃった。(どういう訳か)カーテンもかけていないような部屋でネスタ―がまったりしてしながらイルマと会話しているうちにネスタ―は突然気が付く。彼女の彼氏になったのは良いんだけど彼女の彼氏というのは結局どうやっても「娼婦の稼ぎで食わせてもらうヒモ」以外にはなりようがないということに・・・それって娼婦という存在なんか人一倍認めたくないような自分が一番嫌悪するような生き方じゃんか! で、急に焦りだしたネスタ―はイルマの部屋とムスターシュの店とイルマの仕事場であるホテルカサノバ、あと早朝の中央市場の間を右往左往しながら、幸福なヒモ生活を維持しようと頑張るのでありました。そしてイルマにはネスタ―がヒモになってからX卿という謎の英国紳士の上客が付き、毎晩お相手がX卿オンリーということになります。ネスタ―が惚れたイルマに基本的に求めていることが何かということが理解できないとひょっとしてこの設定に嫌悪感しか抱かないかもしれませんが、映画の元となったミュージカル初演時や映画公開当時において、X卿とイルマの芝居をみる限り実際にこの登場人物二人はセックスしている設定のはずだと邪推するようなトンマ野郎が客の中に存在するとは想定していなかったんだけどね! アマゾンレビューサイトを読んでびっくりしたよ! 「生理的に合わない」て拒否のコメント残している奴はどうもマトモに映画観てないようだぞ! 「小谷野敦」って威張って書いてあるけど、このヒト巷でも著名なプロの文芸評論家さん本人だとしたら恥をかくかもしれない内容コメントなので削除できたら良いんだけどね!!

 フランスの美術監督、アレクサンドル・トローネルというお方

 フランス映画の美術監督として長きにわたり活躍してきたヒトでマルセル・カルネ作品でまず有名なんですが、晩年になってもサブウェイ -デジタル・レストア・バージョン- Blu-rayの中の地下鉄駅構内のセットを作ったという仕事など「ほぼ神がかり」といえます。ハリウッドにも呼ばれることがあり、その中でもビリー・ワイルダーと組んだ作品が多く「あなただけ今晩は」もその一本。ネスタ―は夜明け近くイルマの部屋の窓から降りて行ってレアールで肉体労働に励み、昼間はムスターシュの店と向かいのカサノバを(イルマに正体がばれないよう)往復するのです。その辺のネスタ―とイルマのドタバタのやり取りを支えてるのが精巧なトローネルのセットでもあるわけさ。イルマがネスタ―やX卿とそれぞれいさかいを起こしてしてカサノバとビストロを行ったり来たりするたびに「ヘンテコなコンテナ装置?」みたいなのを使ってネスタ―とかX卿に早変わりするのでもう大変。ネスタ―はイルマと結婚して幸せになるという価値観を一緒に共有したいからX卿という架空の人物を使って彼女を日々説得しているのであって、決して「娼婦と結婚するのを夢見ている」男のはずがないのよっ。それにイルマはお仕事でセックスする必要が無くなっちゃったのは良いんだけど、ネスタ―の方は疲労困憊なので欲求不満になり、それでネスタ―との喧嘩がこじれるんだもん。この辺の芝居の意味をくみ取れないような(そしてインテリ人の自負心が強くて風俗とかに強いアレルギーがある)唐辺木が最近多いので大変です。なので「午前十時の映画祭」でこの映画を鑑賞できる余裕のあるセレブなシニア層の人々とは感覚が合わないことでしょう。さらに余計なことですが、セレブシニアの方にもし才色兼備の娘(もしくは孫娘)がいるのが自慢で(それでおだてられちゃってさ)知人が経営する高級クラブでご令嬢の美貌を見せびらかしたりすると、後々面倒なことに発展するのが昨今の事情のようですのでご注意ください。まあ女子アナなんて世間でもヒト一倍チンピラな輩に媚を売らなきゃいけない商売ですから、無理して就職させる程の価値は無いかもしれないけど。

 イルマの「緑のストッキング」

 イルマは自分の脚線美を誇示する為にいっつも緑のストッキングしか履かないの。これが衣装だけじゃなく演出の小道具にもなって可愛いんだよ。イルマは何故か大きな窓にカーテンも下げないで緑のストッキングをそのまんま窓に張りつけて乾かそうするし、新しい彼氏(ネスタ―)は二人でいるところを外の人間に丸見えなのが恥ずかしいっていうんでイルマは新聞紙を湿らせて窓にペタペタ貼るのさ。こういう恋人たちの日常的な営みのシーンは台詞なしでスッと表現されるのが粋ですね。「あなただけ今晩は」はマリリン・モンロー主役でワイルダー監督が企画していた中の一本と言われています。そんなこと言われなきゃ観客はただアパートの鍵貸します [Blu-ray]のコンビが復活したと思うだけなんですけど。特に日本人にとってはマリリンがパリの素人っぽい小粋な娼婦役、てのはあんまり観たくはないかなあ。カラー映画本格始動という時期に活躍し始めたマリリンが何故かお熱いのがお好き(特別編) [DVD]のようなモノクロ映画でのインパクトが大き過ぎて早死にし、一方のシャーリー・マクレーンがいまだ活躍しているっていうのもなんか諸行無常という気がします。しかし今回は映画の中の色彩について語るどころかだいぶ話がそれました。何気なくアマゾンレビューさえチェックしてなかったら、日○レのアナウンサー問題なんてどうでも良かったのに・・・結局高倉健御大が亡くなろうが、映画の教養有りますアピールをしようが、ワタクシにとって一番興味のあることはもっと別のトコロにあるのやも、反省しないとね。