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近距離恋愛の女① 「逢う時はいつも他人」のキム・ノヴァク

逢う時はいつも他人 [DVD]

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 近距離過ぎる恋愛って結局はご近所不倫ってことなのねっ

 「遠距離」と「近距離」・・・さてよりお互いがよりドロドロしがちなのはどっちなんでしょうか? 「遠距離恋愛」の方はやったことがある人達がそれ程いないだけでなく、第三者からも関知しずらいので、本当のところ何が苦痛で、反対に何が楽しいのかも想像が難しいのですが、これが近距離恋愛の方になると「当人同士が隠しているのがバレバレ」だったりする状況があるので過剰なほどドロドロになるのを期待するところもあったりして。で、この映画の公開が1960年で今から50数年前、なんたって黒澤明天国と地獄 [Blu-ray]の3年も前、関係がないようであるからさ、なのがこの二つの映画。そして主演カップルなカーク・ダグラスとキム・ノバクの御二方は未だ元気にご長寿なの。お話はやっぱマメに御盛んな方が長生きという内容では当然ありません、要するに「隣の芝生は青い・・・なんてこと考えてニヤけていると、お前とご同類の輩がお前のこと出し抜こうと見張ってるぜ、みっともないから止めたら」って感じかな。

本当はアタシがマリリンだったんだけどっ

 デビュー当初のキム・ノヴァクは本名マリリン・ノバクで映画に出演していたんですが、マリリン・モンローが先んじてスターになっちゃた時代「ポジションもろかぶりはヤバい」ということで名前をキムに変更して売り出し、結局ピクニック [DVD]でのセクシーなんだけど内面はドンくさいくらいの真面目美人というややひねったセクシー路線でイメージを確立しました。その後コロンビアスタジオが彼女にやたらいろんな役を振りスターに押し上げちゃった。いわゆる映画スタジオのスター養成システムで成功した女優の最後の一人ってことになるでしょう。(同時代のマリリン・モンローが全部自分一人で己の女優イメージを徹底的に作り上げたのとは対照的)で、いろんな役演っても結局なんか中庸を重んじる堅実派のセクシー美人になっちゃうのが彼女の個性なの。新進建築家で最近「プチスランプ」気味のラリー・コ―(カーク・ダグラス)の不倫相手にはまさにピッタリ。近所の子持ちの人妻マーガレット(キム・ノヴァク)は仕事人間の夫とは最近とんとご無沙汰なのでボーっとしていて、近所のお兄ちゃんとうっかりやっちゃうような女。なのに夫はそれにも気が付かず、マーガレットはきちんと息子と家庭を守り続けているのだよ、どんだけ真面目だとそんなことできるんだいっ。彼女は昔、自分の母親が父を裏切って不倫してたのに深く傷ついていたとかの多少のトラウマを抱えているみたいですが、それでも終始悶々として婚外恋愛とかセックスとか求めるにはマーガレットちゃんの結婚生活は平穏で幸せ過ぎるような気もしますがね。だいたいマーガレットちゃんみたいに人生の大半を「セックスすることを含めてオトコの自己実現に喜んで奉仕する為」に使っていく女性なんてそんな現実に存在するわけないじゃんか。だってさカーク夫の場合は家庭の中で自分の奥さん(バーバラ・ラッシュ)があんまり最近夫の仕事について親身になってくれないって不満に思う気持ちがそもそもの「人妻との不倫衝動」に繋がっているんだもん。バーバラ・ラッシュの方は家族の為にというよりも主に自分のプライドの為に貞操を守るタイプ、だから隣人(ウォルター・マッソー)なんかはマーガレットよりもカークの奥さんみたいなヒトを狙うほうが興奮する。ここでのウォルター・マッソーはカークよりも暇人でもっとディープにむっつりスケベの絶倫オヤジなのさ。キム・ノヴァクはこの映画の演技でも平均点以上の魅力はあるのですが、それは当時の彼女がまだ独身だったからってのもあるかも。彼女の親世代は移民一世なので娘にアメリカン・ドリームを託して育てたはず。だからキム・ノヴァクは周囲に対して自分の意見を押し通すよりも、指示されたことに対していかにブラッシュアップできるかということに誇りを持っていたみたい。めまい [Blu-ray]キム・ノヴァクを使わなきゃならなくなったヒッチコックは「コロンビアの重役に言われたことに従うのがクールだと思ってやがるドン臭い女」って断固として彼女を認めなかったんですが現在ヒッチコックとしてもキム・ノヴァクとしても代表作としてまず挙げられる作品になっちゃったてゆうのが皮肉ですね。

「87分署シリーズ」のエド・マクべインは映画の脚本も書いていたんだよ

映画の原作と脚本クレジットに出ているエヴァン・ハンターは同時期にまたヒッチコック鳥 [Blu-ray]の脚色もやっていますが、そのうち別名義で発表したミステリー小説の人気シリーズでもっと名声を高めることになります。それが警察小説の元祖と言われる「87分署」シリーズでございまして、その中の「キングの身代金」というやつが黒澤明の「天国と地獄」の原作になりました。エヴァン・ハンター名義でそこそこベストセラー&ヒット映画が先に出ちゃったこともあり、しばらくハンター=マくべインという事実を隠したかったようでキャンディーランド (ハヤカワ・ノヴェルズ)なんていうハンター&マクベイン共作のミステリー小説があるみたいだよ、アホか(笑) 「逢う時・・・」のプロットをベースによりダークな話になっているようで映画鑑賞後にもし気になったら読んでみればっ。マクべインさんは従軍中に日本へ進駐軍として行った経験があるそうです。その所為で日本通になったのかどうかは分からんのですが、映画のラストではカーク・ダグラスが設計した斬新な設計の小説家さんの邸宅というのはまさに日本家屋そのもので、家の門扉とか思いっきり木製、おいおいと思って観てるとキム・ノヴァクと二人で家の中へ入ってくし、中庭がある料亭だか武家屋敷みたいなリビングで二人は最後の逢瀬をしてお別れをするのさ。
 で、私は晩年のマクべインさんが日本のTV局のインタビューに答えていたのを観たことがあるのですが、マクべインさんって自分の「87分署」シリーズをハリウッドで映画化&TVドラマ化したやつよりも、日本の黒澤映画だけでなく90年代に渡辺謙が主演していたTVシリーズの「87分署」なんかの方が断然好きだったんだとか。へぇー、「87分署」ってかの日テレ火サス劇場でもキラーコンテンツだったんでそりゃ私だって当時喜んで視聴していましたけどね。ちなみに日テレの「87分署」のシリーズをずっとやってたのは金曜日の妻たちへ DVD-BOXで有名な鎌田敏夫大先生だったりします。いまどきの若者の場合好きな外国の作家に直にファンレター書いて、その若者が同じ分野で出世すると外国の作家先生と文通したり臆面もなく親交を深めて仲良くなりたがるヒトもいるのですが・・・まあ、マクべインさん達の世代ではそんなことはないでしょう、多分。