だって僕らはゲイじゃないんだ ① 「ユージュアル・サスぺクツ」(95)

ユージュアル・サスペクツ [DVD]

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 何となく「父親」とは何者だ?を探すハナシになっているのさ?

なんだか狭くて薄暗い室内に大の男ども数人で閉じこもり、自分たちに与えられた「ミッション」について一生懸命にこなそうと各々頑張るのですが、やがて男たちはそれぞれパニックに陥っていき、にっちもさっちもいかなくなるという展開の映画。一番最初にこの手の映画をやって一挙にアメリカを代表する監督の一人になったのが、かのレザボア・ドッグス [Blu-ray]のQ・タランティーノで、これと双璧で有名なのがこの作品。日本のマニアックな映画ファンの間ではむしろ「ユージュアル・サスぺクツ」の方に熱心な支持をしているような気もしますが、気のせいでしょうか。(それなのにDVD発売の環境がえらく不遇で気の毒)日本映画だとかなり近いシチュエーションで大当たりをとった映画にキサラギ プレミアム・エディション [Blu-ray]というやつもあります。三作品とも「この中の誰かが自分たちの運命を握っている、かつ我々に与えられたミッションの鍵を握る人物なのだが、それがワカラナイ。どいつだ! やいお前か? 俺をはめようとしているのか!」っつーことでテンションが上がっていきます。ところで私は昔シナリオというモノは「人間」を描くんじゃ・・・などとよく叱られたものですが、「人間を描く」=「人間関係を描く」ということについ陥りがちなのが日本映画の特に悪いところだと実は考えているのさ。だからこそたくさん登場人物が雁首揃えているのにも関わらず物語の中心には「人間関係」が存在しない、中心たる人物が空白になっていて、他の登場人物が宙ぶらりん状態になっている映画が90年代に登場し、若い人達ほどこのシチュエーションに熱狂した気持ちがよく解かるよ。90年代って自分探しが大流行し始めた頃で、映画の中の「お気に入り人物」に感情移入しながら観るのが主になっているから誰が主人公だとか、スターが出演しているとか割と気にしないで皆観ていました。で、「ユージュアル・サスぺクツ」の男たちが必死に探している人物って結局何者なんでしょう? とりあえず解かっていることはヒトの子の父親だったてこと。カイザー・ソゼのことですけど。

 なんだか凄んごいヤツらしいぞ「カイザー・ソぜ」!!

複雑な回想形式で展開する為か、アタシは最初っからいきなり五人組の容疑者たち(元刑事のガブリエル・バーン、内気な詐欺師のケヴィン・スペイシー、明るいイケメンな強盗コンビのスティーヴン・ボールドウィンとべ二チオ・デル・トロに爆弾製造のスペシャリストのケヴィン・ポラック)が、いきなり弁護士のコバヤシ(ピート・ポスルスウェイト)に閉じ込められて無理やり「麻薬密輸船を襲え」って命じられるのかと思っていました。が、一応その前段階があったんだよね。ケヴィン・スペイシーFBI捜査官(チャズ・バミンテリ)に語るエピソードがあっちこっちに行くので登場人物の中に女性(ガブリエル・バーンの彼女とか)も混ざってたとかすっかり忘れていたよ。そういや、「伝説のマフィアのボス、カイザー・ソゼ」について語るのも、FBI捜査官の役目だったしさあ。なんでもカイザー・ソゼはドイツとトルコの混血児から組織のボスに一代でのしあがった男、あるとき敵対する超有力組織に妻と子供を惨殺されてさあ、組織に一人で殴り込みに行ってその組織を壊滅させちゃった果てにそれ以来姿を消し、自分の組織の部下にも顔を知らさなくなったらしいのだっ。カイザーは殴り込みに行った時には黒髪のロン毛でイケメンだったんだけど、顔も整形して変えちゃったんだって。・・・気がついたんですが、それってまるっきり寺沢武一スペースコブラ TV1期+劇場版 コンプリート DVD-BOX (31話+劇場版1話, 900分) アニメ [DVD] [Import]のまんまじゃんか!(カイザーの回想シーンがほぼパクリに近いよ)なので未見の方、もし良かったら「カイザーはもともと美形なのに不細工に整形した」というポイントを踏まえてラストまで観ると面白さ倍増だよ(笑)

 なんだか知らないけど「・・・萌えちゃう」のさ!?

 ちなみにここで云う「萌え」とはBL(ボーイズ・ラブ)萌えのことですけどね。だんだん中盤からガブリエル・バーンケヴィン・スペイシーが特に仲良しになっていくし、ガブリエル・バーンがケヴィンのことを庇って面倒みてあげるカンジになるのさ。バーンは以前ミラーズ・クロッシング [Blu-ray]に主演していてそれを観た監督のブライアン・シンガーと脚本のクリストファー・マッカリーはぜひ元悪徳警官の役にガブリエル・バーンをっ、ということになったんだって。でもここの映画でのバーンはいろいろ尽力するけど、なんか優しくて父性愛に満ちた大人の男で、ケヴィンはそんなバーンにちょっと憧れちゃうだしこんな僕にかまってくれて嬉しいみたいなカンジになるのさ、まあそうは言っても映画のラストには「裏切り」が待っているわけで、結局サスペンスのひとつでしかないという効果もありますが。しかしあくまでも監督のブライアン・シンガーが「カミングアウトしたゲイ」っていうことだけで、そこはかとなく漂う「上質なBL感」に目ざといBL好き女子やマジなLGBTはどう反応するんだろうか。ちなみにこの映画の出演以降ケヴィン・スペイシーは一部の間で「ゲイってカミングアウトして欲しい有名人」の一人としてやたらゲイ説が流れたことがありますが「僕はゲイじゃないんだ、悪いけど」とわざわざTVで本人が発言したことがあります。しかしケヴィン・スペイシーがゲイって言われても、ロリコンって言われても意外とピンとこないっちゃこないヒトの感じがするのは私だけでしょうか。個人的には「ケヴィン・スペイシーって実は蝋人形製のアンドロイド」って噂の方がうっかり信じるかもしれない。交渉人 [Blu-ray]の時のケヴィン・スペイシーの役を観た時しみじみそう思った。

 陰鬱で静謐感が漂う映画達

 以前漫画家の永井豪センセイが「ユージュアル・サスぺクツ」がお気に入りだという話を聞いたせいなのかもしれませんが、パブリック・アクセス【字幕ワイド版】スーパーマン リターンズ(初回生産限定スペシャル・パッケージ) [Blu-ray]も合わせて観るとブライアン・シンガーの映画って永井豪の漫画の世界観に近いもの感じます。なんだか陰鬱でとっても静かな世界、だけど轟音が遠くから聞こえているみたいな感じ。永井豪の漫画もちょっと読んだだけでも荒々しい画面なのに「音」が静かにしか聞こえてこない感じがすごく伝わってきます。もし万が一シンガー監督も永井豪のファンだと相思相愛ってことでシンガー+マッカリーのコンビにはスーパーマンよりよっぽどデビルマンを作ってくれって思うんですが。(でもデビルマンだけはキリスト教の国だと映画化タブーなんだそうだ・・・残念)