2017年に劇場まで行って観た映画 ③

 

  春休み中見逃していたところに「ライブ映像のおまけ付き」で近所のシネコンで再上映されてラッキーだった。結構ヒトも入っていて私と同じ手合いの主婦等がいっぱい来ていたよ。

 

  現代だったらこんなてんこ盛りの内容はTVのミニシリーズぐらいの長尺でないと持たないという気もする。でもとんでもなく難しそうだけど。登場人物の心理や言動がそれだけ複雑で、21世紀の現代人には彼らの動機を推し量るのが中々困難だから一見ご都合主義に見えるかもしれない。けど、よくよく考えたら凄く合理的に皆行動するし、いちいち腑に落ちたもんさ。あとイディス・ヘッドのコーディネートがやっぱり素敵♡。

 

20 センチュリー・ウーマン [DVD]

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  すごく面白かったという話をnoteに書きました。

 

「忍びの国」通常版 [Blu-ray]

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  なんかジャニオタの人々はすごく真面目で批評が的確だと思う。でもなんかそれがこの映画の評価には若干マイナスに働いたといおうかw、もっとジャニオタ以外の時代劇ファンにも観て貰いたいのに・・・と内心焦る私はとことん性格が悪いのだろうか?また脇役の若殿様で登場する知念君の存在が結構この映画にとって効いてるとか、ホントに「ザ・ジャニーズ映画」になってる部分もあるからなあぁ。

 

こどもつかい 豪華版(初回限定生産) [DVD]

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  私大昔クロウ/飛翔伝説 [4Kリマスター・スペシャル・エディション] [Blu-ray]って映画をコレ観てとっさに思い出したわ。滝沢くんは背筋と腹筋ではかのブランドン・リーを超えてんのかもしれないって気が一瞬したのw(何故そう思ったのかは解らんが)

 

  なんか昔懐かしいB級ゴージャスアクション映画だったような気がする。ワイルドスピードシリーズとはそこが決定的に違うのね。

 

  この映画とても感じの良い映画なの。2017年数多く作られた漫画原作の映画の中で一番ヒットした理由というのはその美点が有ったからだと思う。総じて「ユルくて無理なことはしない」てだけなんだけどぉ・・・それはそれで大事なのかもね。(なんだかんだ言っても)中村勘九郎が金粉まみれで歌舞伎のきめみたいなのやりながら・・・をギャグにするって贅沢なことよ。

 

ローサは密告された [DVD]

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 季節によってマニラの夜は何時でも雨。何にもしなくたってドラマチックだしノワールなのよね。思いっきりノワールな雰囲気のマニラの夜の警察署とヒロインを始め大人達が繰り広げるドラマの前半部分、昼間になると主に子供達がマニラの街を疾走しながらそれぞれ苦闘していくドラマのコントラストが見事。この映画もっと日本の若い男の子たちが観ればいいと思う、ちょっと身につまされるけど。

 

  去年シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (吹替版)の予告編に登場したスパイダーマンを観て今回の新スパイダーマンシリーズにもあまり期待していなかったんだけど、完全にコミカルなオタク路線に転換するわ、マイケル・キートンが「いかりや長介化」していて堂々の安定感を醸しだすわでひと安心しました、面白かったよっ。

 

  1930年代に制作されていたような第一次大戦を舞台にした映画・・・を下敷きにしたとしか思えない古典的な活劇&メロドラマ。かつてハリウッド映画にそんなジャンルがあった事など皆すっかり忘れちゃったから、魅力的ではあるのだけど多少ついて行けなかった観客が多いみたいだね。(日本の30代以下の男子とか)だから主人公の相手役のクリス・パインがスゴイいい役でカッコ良いのだけど、何故カッコよくて感情移入したいのか?・・・男性の観客の方がより理解出来ていないかも。ちなみに私が「ワンダーウーマン」現象のなかで最もPCだわと感じたのは、アベンジャーズシリーズのハルクとホークアイの役の人たちが「ワンダーウーマンと比べてブラックウィドウの方がなんだか貞操ユルい感じがする」みたいな発言してアベンジャーズの女性プロデューサーが「発言止めろ」って突っ込みを入れたエピソードだった、かなり笑えた。

 

 

 

2017年に劇場まで行って観た映画 ②

 

  この前WOWWOWで見なおしたんだけど、娯楽作品としてはバランス取れていて面白かったし、キングコングと写真家のヒロイン(ブリー・ラーソン)との関係も新鮮で良かったんだが、もう今更キングコングの定番の展開をひっくり返したところで誰も驚かない(笑)。私は公開時吹き替え版で観たので結婚発表したばかりの佐々木希の声優が意外とハマっているとか(劇場で「女の人の声誰?」と騒いでいる観客がいた。上手いけど、どっかで聞いたことあるって思ったのか)・・・少し落ち着かなかった。

 

  観ていて強烈なストレスを感じながらも決して席は立ちたくない、なスゴイ映画。謎の女役の女優さん(チョン・ユヒ)て女、普段はセクシーで綺麗なヒトなのね~。あまりに見事なので後日「コクソン」の監督に「今度は女性を中心にした映画を撮って下さい」なんてみっともないリクエストしてたインタビュー記事をネットで見かけたんだけど、私はその記者の発言についムカッとして「コイツにもコクソン村のキノコ食わしたる」と何故か逆上してしまったわ。このムカムカ気分が頂点に達したのが秋口に「IT」が公開した時だったもんね。

 

ムーンライト スタンダード・エディション [Blu-ray]

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  パステルカラーに溢れたフロリダを舞台にした涼しげな映画。そりゃあ日中はもの凄く暑いけど日が落ちて月が輝く夜には一瞬「涼しい風が身体を駆け抜けていく」瞬間があるのさ。んで、21世紀のUSではいくら極貧で被差別側の環境に置かれた子供あっても、周囲の大人が彼の気持ちを大事に尊重してくれれば、20世紀に多くいたお金持ち坊ちゃんの保毛尾田保毛男くんらよりもよっぽど情緒&精神的には健全で幸せに「男としてのアイデンティティー」を確立できるかもしれない、と示唆する映画でもあるよ。さすがに「世界の鬼瓦権三」さんはアカデミー賞映画としてよりもその部分を要チェックしたんだと思うんだけどなあ。

  コレ日系のプロデューサーも中心に加わってんのね。主役のヘイリー・スタインフェルドの壊れっぷりだけが話題になったけど、本当は脇を固める十代の男の子達の感情の機微が上手に描かれている映画よ。20代くらいまでのの男子もこっそり観てみたら。

 

  レイトン(ユアン・マクレガー)は結婚したけれども結局子供が出来ずに離婚・・・というエピソードが冒頭にあり、それだけで私の頭の中に「彼のWIFEDUTCHの女だったのね」というかなりしょうも無い事が浮かんだが、久しぶりにメンバーと映画で再会した往年のトレインスポッティングファンはもっと素直に楽しんだことでしょう。

 

 

  アニメ版でもそうだったが「野獣だけど本当はイケメンの王子様」という設定が観客側の人間に戻った時のイケメン値のハードルを著しく上げてしまうので必ず「野獣の時の方がかっこよかった」と最後ごねるヤツがいるので困るぅ(笑)。今回はウチの息子じゃ(..;)

 

ショーシャンクの空に [DVD]

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 90年代に見逃した名作映画のひとつ。映画終わった後に後ろの席で「素晴らしいっ」と声を上げていたのがおばちゃんだったのが実に興味深かった。S・キング好きの妹に「ショーシャンクの空観てみなよ、面白いよ」と先に言われたのが面白くなくて見逃していた(笑)という過去もありましたあ。

 

  映画の最初に紅一点のブリー・ラーソンが70年代後半のチャーリーズエンジェル風の格好で決めているのでスカーフで首元を覆っているのを、独りの男が「(相変わらず綺麗だけど)ひょっとして太った?」なんつーセクハラ丸出し発言をする、そいつは南アフリカから来た武器商人の嫌なヤツ。このシーンが良かった。タランティーノ以降、PCの洗礼を正しく受けた痛快犯罪ガンアクション映画。

 

  今をときめく竹内涼真だの千葉耕大だの志尊淳だのがいっぱい出てくる映画。ということなので可愛い男の子を愛でにイオンシネマではおばちゃんしか居なかったのだが、独りだけ授業サボって見に来ていた詰め襟の高偏差値校に通ってるらしき兄ちゃんがいた。地味に北関東の劇場でロングランヒットしていたイメージがある。(笑)

 

  ちなみにこの映画にはバーベキューシーンは存在しない。映画観る前に読んだ映画評のコラムを書いていたビジネスマンがいたんだが、何故だが「BBQで結束力を強めるチーム」として主人公達の行動原理を語っていた・・・てっきりラストはBBQパーティーすんのか?NYのマンションの屋上で?と勘違いしたじゃないかあ困るよ普通に映画語ってよぉ(笑)・・・世の中には鍋奉行とかBBQ王とかに激しくコンプレックスを感じるエリートもいるのかしらねぇ。

 

  私おそらくM・ナイト・シャマランの映画ではアンブレイカブル [Blu-ray]が一番好きかもしれない。なんで映画全体には少しどんよりしたけど、ラストに大興奮♡

 

  「BAKAUKE(ばかうけ)~」と来日時にやたら嬉しそうに言ってた監督になんか狂気を感じた。(一見とても普通ないい人っぽい感じなのに)原作小説では「半円形にみえるlookinng-glass」と表現されているんだけどね。あと原作でエイリアンとの対話に用いる書き文字は円だなんて一言も書いてなかったからさあ(笑)そこに監督の恐るべし野望を見て取ると、頭の中ぐちゃぐちゃになりそうなのじゃ。

 

  監督さんナイト&デイ(エキサイティング・バージョン) [Blu-ray]とかコップランド [Blu-ray]とかも撮ったヒトなのね。どっちも面白かったけど、どことなく「変」な映画だと思ってましたが、自分自身は「シェーン」もろくに観ていない人間なのでそんな生意気はとても申せませんでした・・・反省してます。でもやっぱりこの映画もかなりヘンテコでした・・・15歳以上のお子さんがいる家族で楽しめるアクション大作映画ていうヤツなの。それが今や娯楽映画のど真ん中っていう時代なのね。

 

 

 

 

2017年に劇場まで行って観た映画 ①

 2017年に劇場公開された映画のまとめです。もうすっかりルーチン業務のようになってしまい、息子が先に帰宅していると「何の映画観た? 今度コレ観に行け」と繰り返し命令されるようになりました。彼は今とにかくエル・ファニング嬢が大好き。

 

  映画のラストに生田斗真がエンディングテーマを歌うところで何故だか強い衝撃を受けたという2017年最初に観た一本。(それも作詞がわざわざ原作者の高橋のぼるジャニーズ事務所なのに役者一本で通して、ジャニーズなのに独りでヤクザ系映画の主役張るところまで上り詰めたその時点で今更何故に北島サブちゃんのように歌わされなけりゃいかなかったのか(北海道出身だからなのか)・・・まあどうでもいいんですけど。そんなに任侠映画時代のサブちゃんが好きだったファン大勢いたのかしらん?て気にはなったのだった。

 

  おそらくこの時期(2016~2017年)にかけての「世界の気分」を反映した思いっきり鬱サスペンス映画、思えば日本公開は新US大統領の就任式直前だったのだ。


『ホームレス ニューヨークと寝た男』予告編

50代のイケメンなホームレスが20代女性をナンパして玉砕したり、映画のラストに十代の男の子に向かって「自分のようになっちゃいかん」と説教する姿に「あちゃああ~辛いよねぇ」などと思いながら映画が終了。「パンフレット販売しておりまーす」という劇場のお兄さんの言葉につられ「この映画ウチの息子が興味持ってたから買ってあげようかな」と買い求めたところ、ビルの階段の隅でマーク・レイ本人が居てサインと握手をしました・・・バレンタインデーのプレゼントだったのかな?私にとってのタイミング的には(少しだけだよ)気まずかったんですがあ。

 

スノーデン [DVD]

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  平日の劇場だったのに行ったらすごい混んでいて「人気作なので前の座席しか空いていません」みたいに案内で言われてビックリ。とにかく老いも若きもシリアスな顔つきの男性陣がずらり揃ってた。私といえば映画が進むほど「なーんだあ」て少し安心してしまったのだった。超絶ネットワーク社会になったにしろCIAの手口的に何かが激変したというわけじゃなさそうだね、スピードがめちゃ速くなったってるってだけじゃん(笑)って。もちろん常識的にはそう感じる私の方がおかしいんだろうけどね。

 

 「字幕版ならきっとこっぱずかしくないから一緒に行こう」と息子を誘って観に行き、彼は案の定どハマりしました。4月から新しい学校で放送委員になった息子は映画サントラ版のテーマ音楽を昼食時のプログラムで流す為に無茶苦茶なごり押しをしたらしく、学校の担任にその旨注意を受けてしまいましたあぁぁぁ(嘆)。

 

  予告編で気に入った日本映画は観ることにするっと決めたので観に行った一本。己の眼力を信じて2018年もそれでやってみたいと思います!

 

ナイスガイズ! [Blu-ray]

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  古き良き70年後半のUS。そんな風に書かなきゃいけなくなる時代が来るとは想像してなかったよ。(改めて歳食ったのね自分)なんたってさ、当時の子供はませてて上等!!だったから大麻の売人が13歳の少女を愛人にしててもロリコンだの何だの責められる事は無かったんだからあ・・・酷いけど面倒くさくは無かったかも(笑)

 

牯嶺街少年殺人事件 [Blu-ray]

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  私的に2017年度の「映画について考える課題/テーマ」がこの映画観て決まりましたわ。それで2017年の個人的なおすすめ作品を選ぶことにしてます。2017年前半はこの映画のリバイバル上映が結局一番の話題だったしね。

 

SCOOP!  豪華版Blu-ray/DVDコンボ

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 80年代の映画っつうよか、80年代の青年劇画全盛期をより強く思い出しました。あの時代の劇画のかっこ良さを福山雅治リリー・フランキーが綺麗に再現してみせた感じがしたな。

 

ひなぎく [Blu-ray]

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  いやあ可愛いよね、とにかく何もかも可愛いわ、そんでやたら痛々しいくらいに可愛いの。んで、才気あふれる女の子が作ったんじゃなくておばさんの監督が撮った映画なのね。それを知って少し勇気がわいてきました。長い間観る機会を待ったかいがあったわさ。

 

フォークロアの女 「GET OUT」のアリソン・ウィリアムズ

 

 

 今思うと公開が2017年で「ホントに」良かった!

 ですよね。年明け2018年から現在(2018年師走)でがらっとUSの状況が変わりましたし。オスカー授賞式にこの映画のキャラクターの役者が役柄そのまんまで登場したギャグにしていた頃はまだのんびりしてましたが・・・。ということで↓以下の文章は2017年の秋口のまんまにしておきます。

 

2017年度のベスト〇〇言う時期がやってきました。

 秋口になると「今年のマイベスト」とか語り出す映画ファンが多いのですがこの「GET OUT」とMiss Sloane [Blu-ray]を一緒にあげる人たちは知的エンタテインメント好きな映画ファンということでよろしいんでしょうかね。私は今年5月の段階でこの低予算の映画が全米NO1になったという話題だけは知っていましたが、もうさわりを観るだけでなんとなく「鬱っぽい」不穏な雰囲気が気になり、ちょっと不安になりながら観に行きました・・・結果としてやっぱり暗かったんですが全米NO1になったのはよく判りました。私以前から何となく感じていたなぜだかハリウッド映画に多い「お婿さん受難映画」の典型ですよね。エドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の崩壊」みたいなヤツとかさ。もっとメジャーなところでは風と共に去りぬ [Blu-ray]なんてのもお婿さん受難映画として考えると様相が全く異なって見えるので・・・。んでこの手の「これから彼女の実家に行くんだ」から始まる映画はたいてい豪快なアクション映画(もしくはドタバタ喜劇)で、そこの主人公達はだいたい皆マッチョで知的で二枚目の役者が怖がらずに堂々と向かうのが通例だったのですが、その点この映画は非常に正直といおうか主役のクリス(ダニエル・カルーヤ)が都会の成功した若手写真家でしかもマッチョな二枚目なのはともかく、かなり無理して内心ビビっているのを隠しながら彼女のローズ(アリソン・ウィリアムズ)と実家へと向かう、マイケル・エイブルスのオリジナル曲に乗って・・・まずこの主題曲のインパクトが強烈です。(ブルース調のメロディーにスワヒリ語と英語を混ぜた歌詞らしい)映画冒頭に三曲の異なるサウンドの曲の攻撃に観客は圧倒されるのがこの映画演出の最大の妙かも。監督のジョーダン・ピールはコメディアン出身だそうですがとにかくこの監督「耳が良い」のですよ、ホラー映画としての魅力もそこにあるの。

「異なる音」で人種間の文化の違いや緊張感を描き分けるのさ

 ローズの実家のある地域は殆ど深い森の中にあるといっていい。ドライブしていると横からいきなり野生の鹿が道路に飛び出してきて横切るから思わず轢いちゃうくらい。住民は公務員含めてほぼ白人ばかり。ところが実家に到着すると家には黒人の家政婦(ベティ・ガブリエル)と管理人(マーカス・ヘンダーソン)が居たりする。彼らの存在を巡って起こるローズとクリスの会話や恋人同士としてのコミニュケーションを映画終わった後振り返るとなかなか興味深いというかホラー映画とは別の側面が浮かび上がりますよ。クリスはローズの家族や親戚が自分とは違う白人ばかりで阻害感を味わうのとなぜだか「アフリカ系ぽくないアフリカ系の人々」が数人混ざっている状態に不安を覚えるようになります。一晩泊まってクリスの歓迎会を兼ねて親戚そろったパーティーをするのだけど、とにかく変。芝居としてはもう見え見えというかひたすら「もう主人公はどうにかなりそうだ」な印象で続くのですが 、都会の人間には馴染みのない物音、効果音、乾いた声でしゃべるとっつきの悪いローズの家の黒人の使用人達、映画冒頭からクリスが電話で会話する親友のロッド(リル・レル・ハワリー)のマシンガントーク、そして白人たちのゆっくりしていながら威圧感がある会話・・・これらの登場人物の台詞を含めた音の取り合わせの妙がクリスの焦燥感を募らせていきます。特にコメディアンでもあるロッドの台詞回しは(台詞の内容は平易なんだけど一定のリズムでぶれがないのよ)まるで一本の直線のように画面に見えるんじゃないかって感じ、そこが凄かった。そんなパニクっているクリスに恋人ローズのささやく台詞が救いになっていくのでした・・・流れを観ていけばソレっておかしいけど、感情的にはローズにホッとしちゃうよね、特に男子はさ。

映画のラストは変更されたのさ

 脚本の段階では現在日本で劇場公開されているものとは違っているんだそう、というかだいぶ周囲に反対されたり映画撮影中にあった出来事によって監督はラストを変更しようと決断したみたいですね、でも未だ当初想定していたラストに監督はこだわりがある様子。(なんでUS版のDVDには当初予定されていたラストシーンが収録されている)いまだ米国には人種差別が現存している事をアピールするためには今日本で公開されているバージョンでは不十分だという事らしいのだけど・・・どうも理由がそれだけではないような。終盤に主人公を追いかけてくるローズの暴走ぶりというのは狂気駆られているけど同時にとても悲しい姿なのよ元彼としては。ローズの心理いおうか「一体どんな育ち方したらこうなるの?」な設定を振り返ると、トンでも一家の掟に最も忠実で最も深くスポイルされ「家族環境の犠牲になって意識の底で感情が引き裂かれている」ってことだからね。本気で恋愛した主人公には彼女の苦しみを理解出来るっていうか理解出来るぜ俺はぁ、と主張したいのさ!。最後の最後まで絶体絶命のピンチに遭うクリスを辛くもロッドが救出してくれて「そうさ俺はT.W.mother fuckin.yeah~」とか何とかマシンガントークでまとめてくれるから主人公も観客もホッとするのだけどね。「やっぱり俺の言うとおり彼女はBitchだったろ~?」とかまされると何だかね、それ少し違うんだというのを表現したい気はする。とはいえ脚本当初のエンディングに直しても人種問題という社会派を超えて深遠かつ怪奇な悲恋物語になるわけではないですからねぇ。折しもゴールデングローブ賞ではミュージカルコメディ部門で「GET OUT」がノミネートとか、制作側としては鬱屈としたフラストレーションがたまる事が続きそう。

 んで当初主人公が写真家なのがありきたりっていうか陳腐だなあ・・・って気がしてたんですが盲目の画商(スティーヴン・ルート)なる人物が登場し「君は目が良いんだな、君の目が欲しいくらいだ」って言い出して、ああっ「監督の個人的体験に基づいて構想された」ってそうゆうことなのかと思い当たりました。(笑)

 

 

 

 

 

トンデモ悪女伝説⑦「恐怖分子」のユー・アン・シュン

 

恐怖分子 デジタルリマスター版 [Blu-ray]

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 とにかく観た後に「落ち込む」若い男は多そう、な映画

 この前名画座でやっと観られたんだけど、上映終わって足早に帰ろうとする20代の男子の顔が暗かった(笑)もんね。今年三月にリバイバルロードショーした牯嶺街少年殺人事件 [Blu-ray]も今時の若い男子には内容的にきつそうな映画。だって出てくる女の子達が日本と同じような顔立ちのアジア系でしかも日本の女の子より清楚な美人なのに性格の方は意志強固だし論理的で賢そうなのw。中国の知的レベルの高い女の人ってたいていの日本男子には太刀打ちできないのかもしれないわ。特にエドワード・ヤンの映画に登場する彼女たちは自分のやりたいことに率直だし相手の男に引きずられないで綺麗に男を「切る」んだよね。↑の写真の女の子なんか典型的。一見難しいけど映画観たあとに直感的に何か傷つく、て印象がエドワード・ヤンの映画にはあるみたいだけど説明が難しいのさ。ヒントになるかどうかだけど乃木坂46インフルエンサー」て曲があるでしょう? アレの歌詞の内容を理解した後でこの「恐怖分子」観ると登場する男性達の気持ちがより身につまされて共感できるかもしれない。[infuluence]から派生したのがインフルエンサーなのだけど昔イタリアで占星術師が惑星の配列によって引き起こされる流感を「インフルエンザ」と呼んだのね。だから影響を与える、感化する人間が引き起こす事象は決して良い事ばかりじゃない。其れこそ「死」を呼ぶかもしれないし。映画は1986年初公開されて「恐怖分子ってどういう意味なの?」と今でも観た人の間で議論が起きるのですがじゃあ2017年の今日だと恐怖のインフルエンサーて謂えば良いのかな。

台北郊外のアパートから始まる

 そのアパートの一室では賭博が行われていて、そこに警察の手入れがあり、窓からブルージーンズに白いTシャツ姿の若者が落っこちてくる。中性的だから一見少年みたいな雰囲気だけどよく観るとショートカットの似合う美少女(リー・アン・シュン)。その手入れの現場に居合わせてちゃっかりと事件現場の写真を撮る若い男がいる。皆逃げてガランとした賭博の部屋にいきなりマシンガンが炸裂する(死んだヤツも一人いる)けど、その他は妙に静かに淡々としたもの。んで台湾版のシックな渡哲也かって感じの警部(Bao-ming-Gu)が率いる警察が捕まえたのは上半身裸の長髪男で、飛び降りた少女はけがをして逃げる途中の横断歩道上でぶっ倒れて、若い男はその姿をひたすら写真に撮っていく。コレだけだと何が何だか解らない・・・おまけにこの後はしばらく賭博の取り締まり事件とは全く関係ない夫婦のエピソードが続く。「恐怖分子」未見の人には本当につまらない出だしだと思うのかな?まあひょっとしたらヘンテコで退屈なだけかもね。でも今観ても驚くほど表現がスタイリッシュでシックなの。同じアジアの日本だから余計このシックで洒落た感じが羨ましい。人の死ぬ様子とか登場人物がやたらと歩く姿とかどっかで観たことあるなあと思ったけどその男、凶暴につき [Blu-ray]にちょっと感じが似ているかな。でも世界の北野初監督作品にはこの映画みたいな無印良品のような趣味の良さは無いw。背景の色彩も衣装もモノトーンが基調でアクセントに緑と赤を使ってるのがかっちょいー、80年代の「お洒落系アジア」の描き方はこうゆうもんだったわ。でも映画で実現させたのはエドワード・ヤンだけだったのかあ。・・・ちなみに「恐怖分子」の日本の一般公開は1995年で、「その男・・・」の公開は1989年さ。「恐怖分子」と「その男・・・」が似ているのが偶然過ぎで怖い。

各登場人物が「一方的に」語り行動するだけ

 一転して医局に勤める医師の夫(李立群)と作家の妻(コーラ・ミャオ)を中心に物語が本格的に動き出すのだけど夫は勤め先の病院で、妻は執筆する意欲を枯渇して、それぞれ仕事に問題を抱えているのが描写されていく。夫は病院内での汚職事件に巻き込まれて、妻は締め切り迫っても何も書けず昔の恋人(シウ・チン・キン)に自分の会社で働かないかと誘われる。夫婦は子供もいなくて倦怠期。そんなところへ冒頭の賭博事件に出てきた美少女が何故だか医師の家に電話をかけてきて(彼女は電話帳で目当ての同姓同名の家に片っ端から電話しているから)妻は空き部屋になった筈の賭博の部屋に出かけていって・・・そこの空き部屋では事件の写真を撮ったカメラ青年に出会って、とまあ唐突な感じで話はつながります。ヨーロッパやハリウッドだと「部屋」とか「場所舞台」の存在感がスゴイのですがアジアはそうではなくあくまでも「登場人物」のつながりで話が進むんで、映像的には観慣れないのですが同じアジアの日本人にはお話分かり安いのねw。でもお互いに動機はバラバラ、作家の妻はイタズラ電話に触発されて小説の着想をするし、カメラ青年は賭博事件で出会った女の子が忘れられなくてもう一度会いたくて自分の彼女を振っちゃうし、後に医師の夫はイタズラ電話のせいで妻は自分と離婚を考えるようになったとパニクるし・・・まあ一種のミステリー仕立てといおうか、スリラーぽいのですが、この映画の最もスリラーっちっくなのは、ひたすら女達が男には謎でつれない態度で、男側は常に「自分の都合の良い解釈」をしてしつこいってことかも。しかしイタズラ電話の女の子の「恐ろしさ」はひたすら男達の想像の上をいくのだよっ。

悪夢のような「ただ繰り返す女たち」

 映画の中の主要ヒロインといえばやはり作家の妻になるのですが医師の夫と愛人との間を行き交いながらも、彼女の人生出来事全てを小説を書く材料に使ってしまう為に結局自分の本当の感情は何処にあったのか解らなくなってしまう女性なので困ります。しかもすぐ開き直って相手の男性達(夫にも愛人にも)ガンガン訴えるので男達は混乱して不安になっちゃう、それがまた執着を呼ぶというひたすらめんどくさい事に・・・でもまあ作家の妻がついエキセントリックになってしまうのはインテリ美人だからしょうがないとしても、イタズラ電話娘の方はさらに厄介。彼女が捕まった不良の彼氏がどうしても必要で騒動を起こすのですが、その一方では街に出て金持ちの中年男を引っかけてホテルに入り、金品を盗む事を繰り返す。彼氏さえいれば「美人局」が成立するのでチョロいのですが、一人じゃ大変・・・でもたった一人でも平気で挑戦するんだよこの娘は。普通なら美人局ってカップルの女の子は男に促されてやりそうなイメージなんだけど、彼女の場合は憑かれたような強い動機があってやっているようにしか見えない。でもその動機も映画では最後まで全く説明されない。せいぜい母子家庭っぽい家の娘ってだけなの。それが怖い・・・悪夢かよってくらい怖いシーンもありますからね。それをごく普通にさらっと描いているけど、よく考えたら「すげー変」て映画終わってからしばらく経って気がつきますよお。↑のパッケージの写真見たら、もう可愛いでしょうこの娘?このショートカットの可愛さがくせ者。(笑)

あくまでも主人公の主張かもよっ

 医師の夫は当初病院内での汚職事件は自分の親友が主犯で、そのあおりを受けて上司が急死しちゃってさあ~と家では妻に話している。汚職事件そのものも映画では背景として台詞で語られるだけだし、この設定の最も重要な部分は若くして心臓発作で亡くなったその上司に対して「あの課長奥さんに最近愛人ができたって言って悩んでたみたい」と部下が噂しているシーンがあるからだったりするからさ。どんだけ汚職事件が医師の夫の気持ちをかき乱しているのかが観客にはさっぱり判らないし物語のなかでたいした重要事項だとは思えないの。ただ映画前半の夫は死んだ上司のポストが自分に転がり込むと信じていて妻にもガンガンにアピールするけど彼女は全く興味がなくて夫に対しては「子供が出来ないから別れたい」の一点張りで強引に別れを告げるの。夫は妻とのいざこざに追い立てられているうちに出世を同僚に取られてしかも病院の幹部には汚職事件の首謀者と断定されてしまう。終盤は夫の暴走に走るシーンがとにかくスタイリッシュに描かれて、ええ!? ついさっきまでのは一体何だったの?て感じて唐突に終わる。まるで悪夢が終了するみたいに。・・・映画終わって少し悩むけど、「あのオッサン本当はリベートもらってたの隠しててバレただけじゃねえか?」て私は思ったさ。そうすると別れた妻が医師の夫か愛人かよく判らない子供を孕んでいるのに気がつくシーンも納得できるしね。恐怖分子(インフルエンサー)はスピンしながら拡散するのさ。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

しょくぎょうふじん⑧ 「チア☆ダン」の天海祐希

 

いま現在の(2017年)日本映画に対してクサすならば

 特に日本映画の中の「女性と職業のあり方と社会進出認められ方」について苦言を呈したい貴女ならまず真っ先にこの「チア☆ダン」とまだ劇場公開している「奥田民生になりたいBOYと出会う男すべて狂わせGIRL」を観た上で積極的にクサしましょう。そしてどうしてドチラの映画にも天海祐希が出演しているのかが偶然なのかどうか?ってことです。「新感染ファイナル・エクスプレス」も確かに面白いゾンビ物&如何にも韓流感動映画ですが、今や日本映画を韓流モノと比較して文句言っている段階じゃあありません。つい最近まで「日本の理想の女性上司ナンバーワン」としてフィーチャーされ、TVドラマにひっぱりだこだった天海祐希までもが映画出演の方が目立つ今年。永年映画とTVドラマはコンテンツとして全くの別物として存在していた日本ならではの特殊な環境がようやく終わろうとしている時代に「大昔の日本映画と現代の外国映画さえ褒めとけば後は映画なんてどうでも良い」という一部フェミニストの映画ファンの態度じゃやってけないと思います。特に小学生から高校までの年頃のお嬢さんのいるご家庭では是非鑑賞おすすめします。ごく単純に面白くて元気が出る映画ですし。あと劇場公開時に鑑賞逃してケチってYOU TUBEで観ている方(笑)大画面が観た方がいっそう楽しいシーンが実は「チアダンスシーン以外」にこそあるんだぜっ、詳しく教えてあげるわよ~おーほっほっほ♡

まだ「LALALAND」を観たばっかりだったんで

 またこの映画もミュージカルだったのか?と一瞬見まごうシーンもありましたが、後にDVDでもう一度観た時はダンスで彼女達の気分やノリを表したのねって気がつきました。広瀬すず中条あやみ以外にも新人女優の「顔見せ映画」としての一面もありますから今後の押しの女優も探してみてください。映画の冒頭から主人公のひかり(広瀬すず)を始め皆ダンスがだんだん上手になっていく課程を見せていき、いよいよ全米の大会が本格的に彼女たちの目標になった時点で、ちょっとしたダンスシーンが入るのが楽しい。劇場で観た時には映画前半部のクライマックスに当たる、夜の街で一人ストリートダンスする唯(山崎紘菜)にひかりと彩乃(中条あやみ)が加わって三人で踊るトコが印象に残ったのですが、DVDで見直したらまだ彼女たちそれほど上手くは踊れていなくて私もおばさんなりに自然と若い女の子達の青春ストーリーにストンとはまり過ぎていたのかと改めて思いました(笑)。シネコンの劇場も思った以上におばさん&シニア女性の割合が高く、年頃のお嬢さん方が「まあ皆さん娘さんらしくなってぇ」と感慨にふけって喜ぶほど自分も「老いたり」と感じましたわ。で、そんでもって「此の子たちにも年相応に娘時代を送らせねばっ」と若い女の子達を𠮟咤するおばさんというのはよく「おでこは全開にするものなのだっ」とのたまうものなのです。チア部の鬼顧問のおばさん教師早乙女(天海祐希)のように。

未だ映画のモデル(部活動)も存在しているからこそのリアル感

 映画は抜けるような青い空のアメリカの風景から一瞬で「福井」のタイトルとともにどよーんとした湿気を含んだ山陰の風景に変わります。この辺のベタな演出を非常に嫌う方もおられるようですが、私自身は製作者側と被取材側の関係の近さが肌で感じられる脚本と演出だとそれなりに興味深く感じております、なんたって「事実に基づくストーリー」てやつですし(笑)。459(じごく)の車ナンバーと車の所有者早乙女が語る「それじゃ地獄よ福井地獄よずーっと福井のままよ」の台詞が繰り返されるの最初は自虐的な「福井アピール」だと笑って観てたのですが、そのうちに「このへんの描写福井地元民のお怒りに触れるスレスレなのでは」と少し心配になりまして、後で「やっぱりロケーションは福井じゃなくて新潟かっ」とかチェックしてしまいました。他にもひかり達と袂を分かつチア部の同級生役として柳ゆり菜がバレエをそれなりに披露していますが、肢体がバレリーナというよりやはりグラビアアイドル仕様なわけでこれにもイラッとくる方もいるらしいのです。しかしながらこの映画の柳ゆり菜は出演する他のどの女子高生よりも福井弁のイントネーションが素晴らしく、役柄が地元旧家の広いお屋敷に住むお嬢様でひかり達がチア部の解散危機を防ごうと誘っても「私やっぱりバレエを始める」と断ってしまうやや痛い感じの女の子になっていました。んで夫はこのお嬢様役が柳ゆり菜だと途中から気がついたけど私は当初エンドロールで見つけて少し驚いたくらいでしたよ。私観た後なぜだかかつての大映ドラマ「スワンの涙」におけるヒロイン宮沢りえ(初主演ドラマだったのさ)のライバル武田久美子を唐突に思い出したんですが、柳さんこれで女優としては武田久美子越えしたと思われます。それからひかりのお父さん(木下隆行)がかつて福井商業が甲子園準優勝した時のレギュラーになっている設定だとか。何故そんなマニアックな「部分」に凝るのだろう?ホントにそんな事実があって映画に盛ったのか?・・・等、不思議な見所がありましたね、これは大人向き(といおうかおっさん向き)な映画としての魅力かも。ひょっとしたら監督(河合勇人)の趣味なのかな?俺物語!!(通常版) [DVD]も撮った方なのですがこの映画も非常にティーンムービーのはずなのにオッサン支持が絶大といおうか以前映画館にて「俺物語!!」の予告編も食い入るように見つめていた中年サラリーマンが「コレ今度観たいな観たいけど恥ずかしいから劇場で観られないでも観たい」と背中で訴えているのを見かけ、驚愕した記憶があります。(笑)

「世界のてっぺんに立った」・・・でも「福井」からは逃れられないのかっ

 んで、ひかり達がチアダンス世界選手権で見せるダンスシーンに関しては私、それほど苦言もございません。かつてのチアーズ! ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組) [Blu-ray]のシリーズや実際に全米のスポーツリーグで活躍するチアリーダー達のダンスを取り上げた映像コンテンツ等と比較してみたら、出演者のチアダンスを一曲ぶっ通しで撮ったのをベースにして編集してストーリーを語っている(合間に福井と中継されて地元で応援しているのを描写していたり、USの実況アナウンサーの適当さも実態に近そうw)ているだけでも、たいしたもんなのかもしれないし。むしろなんだか「がっくり」きたのはエピローグシーンでひかりや彩乃が卒業後に自分の夢を見つけたり実現したりするくだりの方だったりしたかもぉ。きっと地元の福井の大人達は安心できるような「大人像」なんでしょうけど。選手権の決勝前に「早乙女先生の葛藤と軌跡」の回想シーンがつづられるのですが熱血教師という以上に地方では教職というポジションがいかにデカいか、はっきり言って「社会起業家並レベル」まで求められているかも、ぐらいの活躍と思い詰め方にびっくりしたもので。それなのに後でコレなのかあ・・・て気がしましたよ。「世界のてっぺんたどり着いた時に見える風景があるのっ」て早乙女先生は激を飛ばすのですが、見えたのは〇〇の天井ではなく福井の厚き壁(福井の大人達の想像のつかないことはやっちゃ駄目w)だったのかも。まあ「女の子のキャリア問題」に関しては2018年度のTVドラマ版に期待をつなげた方が良いってことなのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しょくぎょうふじん ⑦ 「ジェネラルルージュの凱旋」の竹内結子

 

ジェネラル・ルージュの凱旋 [DVD]

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 原作の田口、白鳥シリーズはどっちも男性です。

 それを映画化の際に心療内科医の田口役を田口公子(竹内結子)として女性に置き換えたのがこの映画。海棠尊の田口、白鳥シリーズでは他に「ケルベロスの肖像」が伊藤淳史仲村トオル主演で映画化されており伊藤淳史が田口役を務めています。映画化にあたり田口を女性に換えたのは中村義弘監督の強い希望だそうで、映画では田口が病院や医療関係者とソフトボールチームでピッチャーをやっているシーンが話のポイントになったりさえしているのですが、シリーズが続くにつれ原作小説の男性田口は戦車マニアになったりともう絶対に田口を女優にはやらせないとの原作者の意向が強くなったようで(笑)竹内結子の田口役はチーム・バチスタの栄光 [DVD]とこの「ジェネラル・ルージュ・・・」の二作でピリオドになりました。ジェネラルルージュこと速水晃一(堺雅人)がもう裏の主役じゃね?ぐらいの存在感があり、この役で堺雅人日本アカデミー賞助演男優賞を取った・・といおうかももう殆ど半沢直樹の予告編のような活躍ぶりです。今回この映画を取り上げた理由として一番の興味は主にどうして田口公平が田口公子に変更されたのか?に集中しているのですが。通常ミステリーにおいて探偵役の性別や年齢の設定は極めて重要とされ,、本来探偵役のキャラクターの性別を換えるなんてのはとんでもない愚行にあたると考えるのが本格的なミステリーファンの心得なんです。某有名推理作家の場合はあまりにも映像化にあたり探偵役の設定を勝手に変えるのに怒って映像化を断るようになったという話もあるくらい。で、映画を観ただけの私自身の印象としては「チーム・バチスタの栄光」で作家デビューした海棠尊氏が田口を「不定愁訴の外来を受け持っている」という設定にしたのが運の尽きだったね失敗したね気の毒にという事くらいでしょうかね。

白鳥&田口は「完全なるホームズ&ワトソン」ではない

 「ロジカルモンスター」の異名を持つ厚生労働省のキャリア官僚の白鳥圭輔(阿部寛)は医療過誤死に関するエキスパートとして病院やそこに勤務する田口たちに対しては圧倒的な権威であり恐ろしい切れ者としてシリーズでは活躍します。「チーム・バチスタ・・・」でもバチスタ手術をした医師や看護師達にハッタリをかましたり、わざと相手の怒りをあおったりするのが、初登場シーンとして強調されたりする。原作では白鳥がアクティブ(能動的)な捜査手法を得意とし、田口はパッシブ(受動的)な捜査手法を駆使して周囲や人々を観察していき犯人を追い詰める、というのがシリーズのパターンのようです。海棠尊は医師なので「外科」「内科」のような対象へのアプローチの仕方がまるっきり異なる人物を書き分け「探偵業を分業している」というコンビを明確に描いたのでした。これがホームズものになるとワトソンの方が「より外向的な性格で素直な見方をする人物」になるので、ワトソンの表面的な観察力は内にこもりがちなホームズの推理力にインスピレーションを与えるという役割に止まり、体裁としてはあくまでもホームズの活躍の記録係として登場するのです。なのでホームズ&ワトソンペアの個性の一部を取っ替え引っ替えしてアレンジし直して発展させたのが田口&白鳥ペアといって良いでしょう。それと田口と白鳥では病院の内部関係者と病院を監督指導する立場の官僚としての立場の違いがあるので事件調査に「ゴールする目標」が違います。映画「ジェネラルルージュ」では前作の事件をきっかけに病院のリスクマネンジメント委員会の委員長に田口公子(竹内結子)が就任したところから始まって速水(堺雅人)への疑惑と適切な処分について考えるのが彼女の仕事なのだ、というオチの構成なので、その辺も田口&白鳥の役割分担を観客にはっきり見せていくわけで原作を読んでいなくても分かりやすかったです。

探偵としての田口公子とは

 「ジェネラルルージュの凱旋」の田口公子は病院のリスクマネジメント委員会宛に来た匿名の告発状を受けて速水を独自に調査する羽目になり、医師にも関わらず血が苦手で救急病棟にも入っていけないが自分があ・・・と如何にもやる気なさそうな様子で病院の人々に話を聞いていきます。でも自分の外来を一緒にやっている藤原真琴(野際陽子)と病院内の人間関係をおしゃべりしながら速水の周囲を探っているのはなんだか楽しそう。彼女実は調査について決してやる気が無いわけではないんですね、やる気があるように周囲に悟られないようにかぎ廻っている。これがTVの二時間ドラマだと探偵役の女優が中年過ぎのおしゃべりな相方(もちろん女性)と一緒になって張り切って探偵やるもんだからすぐに調査対象の人々に警戒されるんですけど、田口は病院内の組織の一員ですから殊更渋々にやっているようにそして無能そうに見せないといけない。竹内結子の演技だとそんな感じが強く出る、こう言っちゃ何ですが男の役者より女性が演った方が「昼行灯」などともったいぶってするより展開にスピード感は出るかもしれないです。告発状を匿名で送りつけた人間も誰だか分かっていないしね。そのうちに例の白鳥(阿部寛)が自ら身体を張って無理矢理に入院しようとするし。病院内では速水と反目する大学病院の精神科助教授の沼田(高嶋政伸)や病院事務長の三船(尾見としのり)も登場するので徐々に問題が収斂していくのですが、そんな折病院の近所で鉄道の駅で大事故が発生、大量の救急患者が運ばれて来ることに・・・てなことで後は映画観てね。

チームバチスタの後、なぜだかハリウッドのTVシリーズに出演

 竹内結子は2010年にフラッシュフォワード コンパクト BOX [DVD]という米国のTVドラマシリーズに出演し、そのドラマ鳴り物入りで始まったのに見事ポシャって1シーズンで終了しちゃったのですが、もし人気が継続して竹内結子の出演も続いていたら今頃は彼女どうなってたのか解りません。どうしてオファーが廻ってきたのか?本気で海外進出狙ってたのか?(でもそれは絶対無いな)・・・とにかく謎でした。もちろん日本の竹内結子のファンには米国に進出しなくて幸運だったのは確かです。んでハリウッドが日本人の役者をオーディションする際には出演している映画&ドラマを徹底的に観ていくそうですから、竹内結子の出演している映画をハリウッド業界人は「バチスタ」を始めよく知っているということですよね。

 そしてどうでも良いことを付け加えると英国で例のベネディクト・カンバーバッチ様によるTVドラマシリーズSHERLOCK/シャーロック シーズン1 Vol.1(吹替版)シリーズの世界的ヒットを受けて米国版でも現代版シャーロック・ホームズをやろうということになり開始されたのがエレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY DVD-BOX Part 1【6枚組】でここでは相棒のワトソン役が女性でしかもアジア系女優のルーシー・リューが演じていましてこちらも5シーズンまで続いています。「バチスタ」映画版が影響を与えたとか穿って考える必要も無いのでしょうが、些細な事でもヒントにすることが何事においても必要だし今の日本にとってはどんなジャンルでも一番欠けている要素かもしれません。

原作と映画版の最大の違い

 それはもうおそらく映画はより「二時間ドラマ」っぽく原作はより「ラノベ」っぽいんでは、じゃなかと。(笑)ラノベはさすがに言い過ぎかもしれませんが原作の速水はかなりのモテ男で取り巻く女性陣のさや当てが結構あるのだそうですが、映画ではそこはバッサリ切っているので「ジェネラルルージュ」の命名の謂われのエピソードがより引き立つやもしれません。一緒に観ていた夫は「羽田美智子って俺と歳があまり変わんねーじゃないかっ」と最後ぼやいていたのがもの凄くうざかったのですが。バチスタの小説の読者もそうゆう事ばっか気にする人が多かろうとの判断で「意志を貫いてカッコいい速水」を巡っての恋のさや当てとか必要とされたのかもしれませんね。